読了日記

2008年05月28日(水) 「蒲公英草紙」

「蒲公英草紙」(恩田陸著,集英社)



内容:舞台は20世紀初頭の東北にある小さな集落。一帯の地主の娘、聡子の話し相手としてお屋敷に出入りするようになった峰子の、不思議な力をもつ春田一家との出会いを含めた幼き輝きしひと夏の回想。小説。


恩田陸は私にとって当たり外れのでかい作家ですが、「光の帝国」は好きだったので、そのシリーズということで買ってみました。…文庫に落ちるまで待っていたけどね(笑)。

開き直って言うとこういうジュブナイルな展開、好きです。かなり気持ちよく読みました。
ただ最近どうにも齢を重ねてきた故の要らんとこ読みが多くて。
思い出語りという手法は決して嫌いではありません。「ここではこうやって苦労しているけど、将来、振り返って語れるほど落ち着いているのだ」という安心感があるので。
ただこのお話はちょっと違う。

思い出の“その時代の現在”はとても美しく甘酸っぱく物悲しくも素敵な話でしたが、峰子の「今」を思うと、美しかったのは、輝いていたのはあの時だけだったのだろうかと寂しくなった。
廣隆さんとは結局上手く行かなかったんだなということも含めて、あの夏が彼女の人生の中でぽっかり浮かび上がった唯一の光点だったように読み取れて哀しい。
それでも、たった一点でも美しい日々があった方が良いのかもしれないけど、残りの人生は何なんだろうと思ってしまう。決して不幸ではなかったと思うんですけどね。

も1つ、歴史モノ視点として。
過去を今として描くのは難しいものだなぁと思う。
当時の「進歩的な」思想は今の人に書かれても過去の未来を知る神の視点を持つ現代人だから書けたことだろうと、ちょっとだけ醒める。まあこれは歴史モノではないのでそんな視点は考えなくて良いのかもしれませんが。

ラストもです。
「これからは新しい、素晴らしい国になるのでしょうか。私たちが作っていくはずの国が本当にあるのでしょうか。」
その答えは私達は持っている。60年後に生きる私達は。
だけどその答えはもはや未来が多くない過去に生きる彼女のものと同じではないでしょう。
この今の世界の礎となった彼女ら世代の人たちが「今」幸せに見えない、それが哀しい。

思わず何箇所か涙してしまいましたが、人死にや哀しいシーンでではなく、「あなたの夢見る世界は来ないのよ」という憐憫から、でしたね。

取り合えず常野は相性は悪くないみたいなのでもう1冊も読んでみようかな。
…図書館から借りて。

あ、貴子さんのツンデレはちょっと萌えた。


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