台所のすみっちょ...風子

 

 

下町バレンタイン劇場 - 2003年02月16日(日)

土曜日の夜、指導員の仕事を終え、近くのドトールでコーヒー

を飲んでいると、大学生ぐらいの若いカップルがやって来て、私の隣りの

空いてるテーブルに寄り添うように座った。

女の子の方はちょっとした”素人の優香”といった感じで、

男の子はといえば、これがまた背も高く目がクリっとしていてモデル系。

ビジュアルにかなり力が入ってる2人である。

芸能人でもあるまいし、こんなカップルもいるのかと、

世の中の広さを改めて見る想いだ。


そう、30ウン年、長く生きてきた私の”恋人達に於ける一方的法則”によると、

通常の素人カップルというのは、まさに天気予報図の”西高東低”。

片方のビジュアル度が高ければ、もう一方はほぼ間違いなく低く、

「何故、この人と?」

「どこが良かったのですか?金持ちだからですか?」

と質問までしたくなってしまう組み合わせが多い。



その完成度の高さから

「まさか、本当に芸能人だったりして?」とチラチラと見ていると、

席に座って数分後、

男の子の方が

可愛い彼女が持ってきた

可愛い紙袋から、

可愛く小さな蓋つきカゴを大切そうに取り出した。

そして蓋を開けた彼の手にちょこんと乗っていたものは、

手作りのこれまた可愛く美味しそうなチョコレートであった。

一日遅れのバレンタインデーである。

彼はそれをゆっくり目の前でぐるりと一回転させ、彼女の愛情をよ〜く目で確認

すると、うれしそうにパクリ。

が、「おいしい?」「うん、おいしいよ!」などとは2人は言わない。

味わう彼も静かな笑顔なら、彼女もまた、そんな姿を横でニコニコと

見つめるだけ。

ほっほ〜〜。なんて、ういういしい素敵なカップルなんだ。


若い2人からほのぼのした気持ちをもらい、すっかり癒された

気分になって、店内の時計を見ると8時40分。

「そうそう、夕飯どうしよう・・」と思い、打ち合わせをすべく

家にいるハズの旦那に携帯で電話。

が、2度ほどかけても何故か通じない。

旦那の携帯の方へも挑戦するが、これもまたダメ。

隣りのテーブルでは、”バレンタイン劇場”が続いている。


う〜〜〜ん、、、と思って3回目。

ようやく通じた。

「もしもし〜!!電話したんだよ!何処行ってたの!」
「眠くて寝てた〜〜ふぁ〜〜・・・・」

(ナニ〜〜!人が働いていたのに寝てただとぉ〜〜)

「寝てても、電話ぐらい出れるでしょ!」
「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・」

「ホレ!夕飯どうする!なんか買って帰ろうか?」
「ふぁ〜〜〜ん・・俺なんでもいい・・・・」

困った。旦那は夕方にサーフインから戻ってきて、

その疲れからすっかり「お話にならない人」と化していた。

これ以上何を話しても無駄なようであった。

なので・・

「ん〜〜〜〜、、とにかくさ、ご飯だけ炊いといて!ご飯!分かった?ご飯だよ!」
「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜い・・・ツーツーツー・・・・・・」

パカリ!!携帯を閉じ、イライラしながら私はもう一度、隣りのカップルに

目をやった。

2人は見つめ合い、ポツリポツリと彼の言うセリフに、

彼女がくふふふ・・なんて笑っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

私はこの時ほど自分のことを「おばさんである」と実感したことはない。


おしまい。


...




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