老人と私。かけがえのない・・編 - 2002年12月10日(火) 11月の末からひょんなことでインターネットの指導員を 週3日間やることになった私。 「急に人が辞めちゃったんで、一ヶ月間だけなんですが やっていただけますかぁ〜?」と、この地域でインターネットスポットを 運営しているある所から言われ、ホイホイと引き受けたのであった。 仕事の内容は、パソコンが10台ほど置いてあるインターネットスポットと 呼ばれるスペースに、マウスを今だねずみのことだと思っている パソコンができない人や、Yahooを「ヤッホー!」というかけ声の一種かと 勘違いしているようなお年寄りが来た時、丁寧に教えてあげるというもの。 まあ、”インターネット指導員”というより、 ”パソコンよろず相談員”といった感じだ。 その話を聞いたとき、私の気持ちは高鳴った。 飛び上がらんばかりであった。 「これで、この地域でお喋り友達ができるやも・・。」と。 しつこいようだが、私はここら辺では洗濯屋のおばちゃんしか知り合いがいない。 あとは、隣りのコンビニの「ねずみ男ふう」なオヤジが顔見知りという ぐらいである。 隣りの奥さんとは「どのくらい挨拶をせず黙っていられるか?」という 沈黙耐久レースを、一階からエレベーターを経て部屋のあるこの6階まで してしまい、お互い口を閉じ続けたまま結局ドローだったという経緯がある。 子供もいないので、近所の同年代の女の方々と友達になるわけにもいかない。 いや、もし子供がいて口を何回かきいてもらったとしても、 キッパリとした性格で旦那からさえも「一刀両断女」と揶揄される私を、 誰もママさんの輪に入れてくれないのは明らかだろう。 この際、私に残されたターゲットは人生経験の豊富なお年寄りの 皆さんしかいない。 そんな皆さんであれば、多少のことを私が言ってのけたとしても、 「う〜〜ん、勢いのある良い若者じゃて」ですむだろうし、 わがままを通しても、 「そのうち分かる時が来るんじゃて。見守ってあげましょうぞ」 なんて、大きな気持ちで私を包んでくれるに違いない。 これはいい! かけがえのない友人ができるかも。 つまりそこで教えるということは、私の人間関係の輪をぐっと広げること、 強いては今後の私の”生き生き地域生活”を決定づけるものといっても 過言ではない。 あわよくば、「先生、今度うちに遊びにきてくださいなぁ〜」と誘われて遊びに 行ったついでに、ご自慢のぬか漬けとか貰えるかもしれない。 キュウリがいい・・・・。 夢は膨らむばかりであった。 ウキウキとした気持ちを持って望んだ指導員。 が、やり始めるてみると私の思惑は呆気なく水泡に帰した。 だって、初心者なんてぜんぜん来ない。 来るのは、キーボードを何かに取り付かれたように乱れ打ちする上級者ばかり。 しかも、自分の部屋感覚で4時間や7時間平気でアニメサイトを見るような オタク系も多い。 お年寄りも来るには来るが、私だってやったことのないYahooのオンライン ショッピングなんかしたりする。 チッ!と思っていたそんな私に、先日、ついにお年寄りからお声がかかった。 それは「このパソコン遅いんですけど」という苦情。 言ってきたのは、70歳ぐらいのおじいさん。 見たいサイトのページがなかなか出てこないというのだ。 「そんなこと言われても、そういうこともあるさ」なんて思ってみるも 何もしないわけにはいかないので、取り敢えず隣りのパソコンに移ってもらって、 遅い原因を探ってみる。 う〜〜ん、、、ちっとも分からないのであった。 しかし、人には聞けない。なんたって私は指導員だから。 指導はしても、されてはいけない。 教える立場のくせにその場にいる誰よりパソコンの前で固まってしまった私。 その私をさっきからチラチラと見るおじいさん。 彼の視線を左半身で感じつつ、尚もパソコンの前で地蔵化していると、 そのおじいさんは私にポツリと声をかけるのだった。 「私が見てあげましょうか?」と。 私ったらなんて情けない。 記念すべき初めてのお年寄りとの接触、 それはかけがえのない友人を作ることが、キュウリのぬか漬けを貰うことが、 いかに困難かということを私に教えるものであった。 おしまい。 ...
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