笑み。 - 2002年12月06日(金) 世の中何が怖いって、電車の中で本を座りながら読んでいて、 ふとした拍子に顔を上げた時、自分の向かいに座っている人が意味もなく一人、 笑みを浮かべている状況に遭遇することである。 今日の私がそうであった。 夜、11時過ぎのJR中央線。 その数十分前に別れた妹から借りた本から目を離し、 何の気なしに顔を上げた瞬間、向かいに座っていた男の人が 背筋を伸ばした正しい姿勢で、どこを見つめるわけでもなく、 ほくそ笑んでいたのである。 いったい何が彼をそこまでハッピーにさせているのか? ちなみに彼の目線の先にあるのは、自分の顔が映っているであろうと 思われる向かいの窓のガラスだけである。 彼は格好いいのであった。 年の頃は40歳ぐらいか。 顔は唐沢寿明と小田切ジョーを足して2で割ったような顔。 白っぽいベージュのチノパンに、黒のピーコートを着込んだその姿、 軽く後ろに流したナチュラルヘア〜は、明らかに業界人といったふうで、 洗練された大人の男といった感じ。 私は「な、何も見てやしません、、、」という素振りで、 再び開いたままの本に目をやったが、頭の中にあるのは その笑みのことだけである。 まさか、窓に映し出された自分の容貌を見て、 思わず口角がひょいっと上がったのでは? それとも、これから若い愛人とランデブーか? いやいや、どんな理由があるにせよ中年男の”一人笑み”、 それはかなり不気味度高し。 だからやっぱり思ってしまう・・。 ニヤリと笑ってさえいなければ・・笑ってさえいなければ・・・・と。 そして、本を見つめること10分。 怖いからもう見ないことにしようと、自分に言い聞かせていたのにも関わらず、 私はまた顔を上げてしまった。 今度はいったいどんな顔なのかと思って。 より、”笑み度”が増していたらどうしようかと思って。 すると意外や意外、彼は怒っていたのであった。 またもや背筋をまっすぐ伸ばした正しい姿勢で。 しっかと正面を見据えながら。 今度は怒っている・・怒っている・・・。 いったい何に?・・・何に・・・? 私は三たび本に目をやった。 次に顔を上げた時は泣いてるんじゃあるまいな?と思いながら・・・・。 おしまい。 ...
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