台所のすみっちょ...風子

 

 

「白」の考察。 - 2002年12月05日(木)

私は小さい頃、ほとんどといって良いほど童話を読まない子供であった。

読んだ数が少ないから、それなりに印象に残っている本はあって、

そのうちの一つが「くまのプーさん」。

何故、プーさんかというと、さして起承転結のハッキリしない

ビックリするぐらい眠たい本だったからである。

今読めば、違ったのかもしれないが、当時の私がその本から得たものといえば、

「熊の大好物は蜂蜜」ということだけであった。


それでも、かろうじて読み進むことができたのは、

途中チラチラとあった小ジャレた挿し絵のおかげだろう。

その絵は内容の意味を楽しく深める役割というよりは、ダラダラとあくびを堪えて

読む私にあって、気合いを入れ直すためのリゲイン。

または受験勉強の時、睡魔と戦うために瞼に塗ったトクホンのような

意味合いを持つものであった。


その挿し絵のおかげかなんかは分かんないが、私はプーさんが嫌いではない。

プーグッズを部屋に飾るなんてことはもちろんしないが、

遠巻きにではあるが結構可愛く思っているのだ。

「話を憎んで、熊を憎まず」。

なんて寛大な私・・自分の人間としての器の大きさを実感せざるおえない。


そして昨日、そんなプーに寛大な私をビックリさせる出来事があった。

知り合いの所から帰る途中、とある駅ビルに寄った時のこと。

「今夜は唐揚げ・・唐揚げ食いたい・・」とそればっかり考えて、

家で作るか、買って帰るかで迷いながら歩いていると、

急に聞こえてきた黄色い声。

「キャ〜!見てこのプーさんすっごく可愛い〜〜」

目をやったその先には、ショーウインドウにバッタかカエルかといわんばかりに

張り付いた若い女の子達が2人。

そしてショーウインドウの中には、

ちょっとやそっと抱えられないぐらいでかいプーさんが座っていた。


プーさんは全身真っ白なのであった。

目の玉だけは、黒かったが、あとは全身真っ白。

あの栗カボチャ色の黄色い胴体と顔が真っ白。

そして、還暦祝いのような赤いおべべの変わりが青い服。

形は確かに普通のプーさん。

だが、彼は私の知っている元気なほのぼのプーさんではない。

非常に病弱な感じに見える。色白すぎて。

しかも悪いことに、着ている青い服がその顔を一層白く感じさせ、

具合が悪そうというよりは、雪の中から発見された凍死した熊のような

気さえするのである。


私は前にも、本人の意思とは関係なく、真っ白にされてしまったお馴染みキャラを

見たことがある。

それは、ミッキーマウスとその恋人のミニーちゃん。

友人が浦安のディズニーランドから買ってきたと言って

自慢げに見せてくれたのであったが、彼らは目の玉まで白かったものだから、

こちらは病弱というよりは、もはや黄泉の国に行ってしまった人達のように

不気味であった。

何故、白かったという肝心の理由は忘れたが、友人の前で何とコメントしていいか

困ったのであった。


「この犯人は白だ!」とか「色の白いは七難隠す」だとか”白い”という

ことには、とかく良いイメージが付きまといがち。

清廉潔白なんて言葉もある。

おまけに今はどこもかしこもクリスマス気分真っ盛り。

”ホワイトクリスマス”なんて言われるように、

この時期”白い”ということには、ロマンチックなイメージさえある。



あのプーサンを企画した人は、きっとそこら辺を狙ったに違いない。

若い女の子も可愛いってツボにハマっていたし。

が、どう見ても私には精気を吸い取られたような熊。

「入院中だったけど、クリスマス商戦のため、僕頑張ってマス・・」的に

弱々しくショーウインドーに座ってたあのプーさんを思い出しながら、

「白いというイメージに甘えて、なんでもかんでも白くしてはいけない。」と、

深々と考えさせられる私なのだった。


おしまい。


...




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