今日もガサゴソ
INDEX|戻る|進む
母は美貌才媛の姉妹に挟まれて みそっかすで 物心ついたころに、お金持ちの遠縁のところに 養女に出されたことがあり そこには馴染まず出戻りの経験があります。 半年くらいのことだったらしいのですが 戻ってきたときには すっかり津軽弁になっており 姉妹たちとも少し距離ができて たいへんに切ない思いをしたのだそうです。 そのとき、母はザルを三度笠に見立てて 歌って芝居をする芸を披露したそうです。 ふすまをさっと開いて登場する! (何かの演芸会でみたものを真似したのだそうです) それが大受けで、以来母は 辛いときはお笑いで切り抜けるという技を会得したようで 気の毒なほどに繊細な心を持ちながら 辛い場面で、辛さと向き合うよりも 元気に明るく振舞おうとします。
だから、父との困難になっていく暮らしにも 耐えてこられたのでしょう。 限界突破しているのに それでも何度も気を取り直して やってきたのでしょう。
倒れた日とその前の記憶がぼやけているのだけれども 父をなじって泣かせたような気がすると呟きました。
たった一口、飲んだり食べたりするために 一日中小突き回される私の身にもなってみろ 両手も腫れてしまって力がでない 腰も痛い せめて夜中だけは 車椅子に移動しないで ベッドで身体を起こして、そこで飲んだり食べたりしてくれないか なぜそうしてくれないのか せめて、ベッドに腰掛けてそれで済ませてくれないか
それでも父は頑として、 移動すると主張し泣いたのだそうです。
悲しみが怒りになり 憎しみになり ヒステリーを押さえることが出来ない 介護疲れで殺人事件が起こる きっとそれはこういう気持ちからなんだろうと 恐ろしかったそうです。
母がたくさんの思いを吐き出しているテーブルの向こうで テレビニュースに今日もまた 介護に疲れによる殺人事件を報道しているのでした。
|