今日もガサゴソ
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2005年08月17日(水) 糸のお話し

子どもの頃、家にあった子ども向けの本の中に
「11羽の白いハト」という本がありました。
残念なことに、本は手許に残っていませんので
作者や翻訳した方のことがわかりません。
グリム童話に類似の物語がたくさんあるので
ヨーロッパの昔話をベースにした物語なのかも知れません。

お話しは、こうです。

王様が再婚したのは恐ろしい魔女でした。
魔女は11人の王子と、12番目のお姫様を城から追い出します。
11人の王子は呪いでハトにされてしまいました。
兄たちの呪いを解くために、お姫様は
笑うことも話すこともせず、恐ろしい沼地のイバラを刈り取り、
それから糸を紡いで、11着の上着を編まねばならないのです。

お姫様は辛い作業を黙々と続けます。
ある日、通りかかった王子に見初められて
城に連れて行かれ結婚しますが、黙々と手を動かします。
その異様な姿に、あの女は魔女だ、とウワサされ、
火あぶりにされそうになります。

処刑台に火がかかったその時、11枚目の上着が編み上がり
11羽の鳩たちが次々と舞い降り、
王子の姿に戻ります。
こうして誤解は解け、皆は幸せを取り戻し、
悪い魔女は報いを受けます。

何度も読んだ物語ですが
当時の私とあまり変わらないであろう年頃のお姫様が
「イバラから糸を作ることができる」というのが
とても不思議で新鮮に感じました。

呪いを解くためであったり、
生活の糧を得るためであれば
果てしなく辛い作業かも知れないけれど、
趣味の範疇であったなら、
ひょっとして楽しいものかも知れないと思うのでした。

二十歳くらいの頃、バイク仲間の女の子が
「この頃、糸作るのが面白いんだよね、毛糸」といって
原毛のかたまりと、自分で紡いだ糸を見せてくれました。
「まだ下手くそでさぁ」というのですが、
そのデコボコした糸がとても愛おしく、素敵に思いました。
さっそく、原毛を扱っているお店を教えてもらって見学に行きました。

そのお店で、草木染めの手つむぎの毛糸を見ました。
その色の優しいこと、美しいことといったら
もうたまらなくて、ぼ〜っとしてしまいました。

そして、そのお店でどうしてもこれが欲しいという色の
原毛をひとつ選ぶことが出来なくて
すごすごと手ぶらで戻ってきました。
これはうっかりすると、自分で染めたくなるし
羊さんを飼いたくなっちゃうよ〜。
吸引力強過ぎっ。

そのことがあってから
糸は少し甘よりでデコボコしていた方が好きになりました。
工業製品の間違いのない美しい糸よりも
もっとぬくもりを感じるものをと思うようになりました。


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