今日もガサゴソ
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十数年前、亭主と結婚して 最初のゴールデンウィークのことでした。
実家の居間に続く和室に 和裁の裁ち板を百科事典にのせて作った台ふたつに ずら〜ッとおひなさまが並んでいました。
母が恋しがっていたおひなさまが 伯父の家のリフォームの時に出てきたのを 預かったのだそうです。
古びてはいますが、欠けたり剥げたりもせず かたちを保っていたようでした。 綺麗にほこりを払い、錆付いて壊れてしまった 刀やしゃくを父が適当にこしらえてもたせてありました。
当時、健在だった祖母が そのおひなさまの持ち物や並べ方を しっかり覚えていたそうです。 毎年一段ずつ買い揃えていき、でも、最後の 牛車のときに戦後のドサクサでお金が工面できず 小さなもので間に合わせたのが心残りだったとか。
おひなさまの製造元は久月で、 今も同じお顔のおひなさまが売られています。 繊細で美しいお顔立ちで、衣装は色も褪せているのですが みすぼらしさは感じませんでした。
母や伯母や祖母が懐かしさに触発されて 次々に思い出す鮮やかな昔のはなし。
母はそのおひなさまをニ三年手元に置いて それから、祖母と伯母の住む家に運んだようでした。
私は今でもおひなさまを持っていないし、 美しいひなまつりの思いでも持っていません。 焦がれる思いを胸に抱いてきた母が おひなさまの前で童心にかえる様子を見たことだけが 良い思い出かな。
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