いっしょくんの日記

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なんとなく 書くんで〜
なんとなく 読んで下さいね。

2002年10月04日(金)  痴呆

 今日は施設訪問の日です

 秋晴れの空を見渡して
 今日はどなたかをお散歩にお連れしたいな と
 考えながらの到着です

 空になったヘルパー室・・・
 相変わらずの忙しさを物語っています
 私も迷わず痴呆棟へ向かいました
 お風呂からはヘルパーさんのあわただしい声
 ほんの少しドアを開けて
 「おはようございまーす!お天気がいいので
  どなたか お散歩にお連れしましょうかー?」
 と 相談です 
 「おおおおおっ!ありがとうございまーす
  この方をお願いしまーす!」
 中からの返事と共に 小柄な女性が顔を出します
 「こんにちは」
 「だってね・・・そうらしいわよ・・・そうだっていうのよ」
 あっ・・・
 かなり痴呆が進んでいる様子です
 5分ほどの会話で お名前がわからないくらいの
 程度であることがわかります
 かみ合わない会話を続けながら
 腕を組んで 屋外にでます
 絶えず意味のない言葉をお話しています
 それに相槌を打ち続けます
 しばらく会話をしていると
 意味のない言葉の間に 伝えたい言葉があることに気がつきました
 「それでもね・・・あなたが退屈・・・きっとそうね・・・」
 こんな具合です 私を気遣ってくださってる・・・
 すごく嬉しいです この方の中に私が居る
 それはとても嬉しいことです

 お部屋に飾ってあった写真は
 グランドキャニオンの前で お孫さんらしき人と
 写したもの・・・
 「・・・グランドキャニオンですね・・・・」
 つぶやくように言った私に
 「こうするとね・・・まだいいかしらね・・・
  どうも違うお部屋じゃないかしらって
  そんなことにはね・・・だからよかったわよ・・・」
 はいはい ここは私のお部屋ではないですよ・・・
 気にしていらっしゃるのね
 いい写真ですね 素敵なおばあちゃまですよ・・・
 心でつぶやきます
 
 お昼前 オムツが汚れてしまい
 ヘルパーさんに替えていただくとき
 お部屋の廊下で待っていたら
 「ねぇねぇ どこ?あの方はどこ?」
 ・・・・私のことかしら・・・
 「ん?」と顔をのぞかせると
 「あぁ・・・いらしたのね」
 と にっこり顔です
 綺麗にしていただいて 食堂に歩き始めるとき
 まるで子供のように 私の手を捜して
 つないでくるではありませんか・・・・
 もしも私が 全てを忘れてしまったら
 こんな風であるといいな・・・
 そう願ってしまいます
 
 ここまでどんな人生だったのかな
 愛する人も 大好きなものも
 自分も プライドも・・・
 余計なものが全てなくなってしまった
 同時に 大切なものたちも記憶から消えてしまった
 ・・・一人の人・・・
 私はこの女性を とても愛しく感じました
 大切に思いました 出来る限りの優しさで
 接したい・・・そんな思いでいっぱいになったのです

 やっぱり 人が好き
 こんな「出逢い」もあるのですね
 充実した会話や 楽しく過ごした時間 共感 理解・・・
 そういうものが無くても
 いい出逢いだと思えるものがあるのですね

 離れてしまった瞬間から
 彼女の中の 私の記憶は消えるでしょう
 でも私にとっては またひとついい出逢いが増えたのです
 大きな収穫なのです



     花


  好きだった花

  好きだった人

  好きだった音楽

  好きだった場所

  好きだった歌

  好きだった食べ物

  私には 私にしかわからない

  好きなものがある

  ある日 全てを忘れてしまったら

  誰か私のために

  好きだったあの花を

  私の部屋に活けてくれるかしら 

 


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