...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年02月04日(火)

ピンポンピンポンピンポンピンポン

激しく鳴らされるドアチャイムの音で目が覚めた。
いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったのか、
窓の外はすっかり明るくなっている。
ぼうっとして周りを見渡すと
テーブルの上には、冷たくなった味噌汁のお椀と
硬く乾いて脂の浮いた肉がまだそこに乗っていた。

夕べの悲しい気持ちがよみがえって来てまた涙が出そうになる。

僕のそんな感情なんかお構いなしに
狂ったようにチャイムは鳴り続けた。
仕方なく、むっくり起き出して玄関に向かった。

鍵を開けると父が凄い勢いでバンッとドアを開けた。
僕をノブに手を掛けていたので少し前方につんのめる。
「おい、大丈夫だったか!サチ!」
僕が返事をする間も無く、父にぎゅっと抱きしめられた。
父の肩越しに後ろを見ると、知らない女の人も
心配そうに僕を覗いていた。

「可哀想に、可哀想に・・・」
ぎゅっと抱かれたままでちょっと苦しかった。
ご飯も食べずに初めて一人で過ごした夜は辛かったんだろう
父親の腕の中でわけの分からない事を叫びながら
僕はまた泣き出してしまった。
でもこれは安心感からの涙だ。
普段いっちょ前な事を言って生意気な自分も
まだ子供なんだよな、と心の隅で恥ずかしくなった。


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