...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2002年12月07日(土)

ミユキの母親は、僕の体を無言で洗ったあと、
ミユキの兄の服を僕に着せた。
僕は、男の子の服なんてちょっと嫌だなぁ、と思っていた。

まだ自体を把握できずに呆然としている僕を連れて
ミユキの母親は僕の手を引いて僕の家まで歩く。
しかし、彼女は何も喋らない。
僕も何も喋らずに歩いた。
彼女は僕を見ようとしない。
少し顔を上げて彼女の顔を見るが、真っ直ぐに前を見ているばかり。
心なしか怒っているようにも見えた。


玄関を開けて、僕の母が顔を出す。
開口一番ミユキの母親が発した言葉は

「どうしてこんな事をなさるんです?」

少し激しい口調に、横に居た僕は少したじろいだ。
が、僕の母は何を言われているのか分からない顔をした。

「女の子みたいな格好をさせるなんて、かわいそうよ」

僕は可哀想じゃないよおばさん。
スカートは可愛いし大好きだよ。
そう言おうとしたが、その瞬間から大人二人の口から
矢のように言葉が飛び交い、不穏な空気を感じた僕は
二人の間をすり抜けて自室へと向かった。
陰から玄関の様子を伺ったが、
彼女達は僕がその場から居なくなったことにも気付かない様子で
何か言い争いをしているようだった。

もうやめて!喧嘩しないで!
心の中で僕がそう叫んだ時、
母の怒鳴り声が聞こえた。

「サチは!女の子です!」

そして、ドアがバタン!と激しく閉まる音がした。


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