...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2002年11月16日(土)

「サチ、さっちゃん、可愛いわ。すごくよく似合うわ。」

フリフリのたくさん付いたスカートを着せられて
頭にリボンを結んだ、髪の長い「少年」が
母親と共に鏡の前に立っている。
満面の笑みを浮かべながらご満悦の母親。
そして、嬉しそうにスカートの裾をくるくるさせているのは・・・

僕だ。



僕の母親は、結婚して7年ほど子供が授からなかったらしい。
僕の父親の両親には石女と蔑まれ、親戚達には子供はまだかと催促され。
病院に行こうにも、本当に自分は子供を作れない体だと
宣告されるのが怖くて行けなかったそうだ。
守ってくれるべき夫は、日に日に冷たくなっていく。
ますます子供など作れる心理状態ではなくなっていく。

そして7年目
僕の父親は、妻に離婚を言い渡した。

そういう時代だったのかどうか
母は文句も言えずにすぐに家を出された。
だけど、その時には彼女の腹には僕が宿っていたのだ。
欲しくて欲しくてたまらなかった、子供が。
彼女が望んでやまなかった、「娘」が。

そう、母は娘が欲しかった。
エコー検査で僕が男の子だと知った時
子供が出来た時の嬉しさも薄れるほど嘆いていたそうだ。
僕の母は・・・
「子供」が欲しかったのではなく、「娘」が欲しかったんだ。



-




↑エンピツ投票ボタン
My追加

 

 

 

 

INDEX
昨日  明日

Mail