...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2002年11月10日(日)

僕達は久々に街に買い物に出た。
今は街もすっかり雪で真っ白だ。
丁度今の時期は大通り公園でホワイトイルミネーションが始まっている。

凍りつきそうな冬独特の空気の中、僕達はビルの谷間を歩き回った。
途中でショーウィンドウが目に留まり、立ち止まる。
「綺麗だなぁ・・・」
ガラスに張り付いて食い入るようにそれを見つめる僕。
隣では妻も、そうだね、と言って吐息を漏らした。
ショーウィンドウの中には真っ白なウェディングドレス。
たくさんのレースとガラス玉に彩られた真っ白なドレス。
大きな百合の束を持ったマネキンが微笑んでいる。

「一緒にウェディングドレス、着たかったね」
妻が僕を見上げた。
うん。僕は君と一緒にドレスを着て結婚式をやりたかった。
だけどそんな夢はかなわないまま。
まぁ・・・当然か。
妻は「いつかもう一度、二人きりで結婚式を挙げましょう」
と言ってくれたが
だけど僕はもう40になってしまった。
きっと自分が見ても、僕のドレス姿は美しいとは言えない代物だろう。

「いや、いいんだ。君のドレス姿は綺麗だったからね」

妻はまだ何か言おうと口を動かしかけたが
僕は繋いだ手を引っ張って歩き出す。
そろそろ空が薄暗くなってきた。
公園のイルミネーションを見に行こう。
多くの電球をまとった木々は、さぞかし綺麗だろう。

まるで、光のドレスの様に。



-




↑エンピツ投票ボタン
My追加

 

 

 

 

INDEX
昨日  明日

Mail