全てフィクションです 【父との秘密】エピローグ・父の死 - 2002年10月07日(月)父は、4年病院のベッドにいた。 その間、時々母から電話がかかってきては父の近況を聞かされた。 父は言葉は理解できないものの、 一時は車椅子に乗って、自分の足で車椅子を漕ぐくらいまで回復したらしい。 だが、そんな回復を見せたのも一瞬だったそうだ。 一時は肺炎になり 一時は呼吸困難になり そしてある日祖母から、父がもう危ないと連絡を受けた。 あたしが病院に着いた時には既に、父は亡くなっていた。 母は意外にしっかりした様子で看護婦とともに父の体を拭き 死に目に間に合わなかったあたしを静かに責めた。 父の死に直面しても尚、 思い出すのは父との思い出したくも無いような事ばかりだった。 目の前で人が一人亡くなったというのに あたしは人としての感情をどこかに置き忘れたかのように 胸から湧き出してくるのは、憎悪ばかりだ。 あれから何年も経とうとしているのにも関わらず 何一つとして気持ちが変わらない。 子供の頃は、父など死んでしまえばいい、 死んでしまえば何かが変わると思っていたこともあったが 実際父が亡くなって、自分の中で何かが変わる事など一つも無かった。 ただ、あの父がこの世のどこにも居なくて もう二度と顔を合わせる事はない。 あたしは安堵の混じった不思議な気分でいた。 母は葬儀の間中、時に静かに空を見つめ、 時に声を殺して涙を流し、 時に大声で嗚咽をあげながら父の遺体にしがみ付いていた。 それでもあたしは 悲しいという気持ちも 涙も何も、湧いては来なかった。 だけど、自分の中の葛藤が これで終わったわけじゃない。 -
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