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【父との秘密】エピローグ・病室 - 2002年10月06日(日)

母から電話のあってから数ヶ月の後
あたしは結局父のいる病院に向かっていた。

病室で横たわる父
額には、手術の時に頭の皮を留めていたという傷が、まだ残っていた。
額の上の頭蓋骨が、奇妙に盛り上がっているのが見て取れた。
体は細くなって骨ばかりだ。
ひざなどの関節が妙に大きく感じた。
父はあたしを見て涙を流し、言葉にならない声をあげていた。

これはどういう状態なのかと母に聞くと
もう体はほとんど動かない状態で、人が来ると涙を流すだけだ、と言った。
ここにいるのが誰なのか、理解しているのかどうかも分からない、と言っていた。

父もかなり衰弱していたが
毎日病院に通って来ている母もまた、疲れきっている様子だった。

あたしは母から「何か声を掛けてあげて」と言われたが、
やはり何も言う事は出来なかった。
あたしを中学まで育てて貰った親だが
あたしの中では感謝の言葉よりも憎悪の言葉しか浮かばなかったからだ。
こんな場面でさえ父の事を可哀想とも悲しいとも思えなかった。

ただ、母の姿は哀れだった。
毎日父に付き添い、疲れが増していっそう皺の増えた顔。
何の疑問も抱かずにあたしをここに呼び出す母。
父のわずかな動きに一喜一憂する母。

あたしは、居たたまれなくなって病室を出た。



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