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【父との秘密】エピローグ・母からの電話 - 2002年10月05日(土)

あたしが二十歳になった頃、母から電話があった。

父が倒れたという。
倒れる何日か前から、ずっと頭が痛いと近所の病院にかかっていたらしいが
偏頭痛と言われていたらしい。
それが、会社で立ち話をしている時に急にパッタリ倒れた。
これから脳外科にて緊急手術だという。
病名はクモ膜下出血だそうで、手術が成功したところで
元の様に回復できる見込みは無い、と。

母は半泣きになりながら状況を説明していた。

が、あたしは母の真剣な訴えを聞けば聞くほど、自分の心が冷めていくのが分かった。

電話の向こうでは母が金切り声を上げている。
あたしは母のどんな言葉にも「ふうん」としか答えられなかった。
他の言葉を発するわけには行かなかったのだ。
今口を開けば、父を罵る言葉しか出てこない。


あたしは

「ざまあみろ」

という言葉を必死で飲み込んでいた。


母は、あたしに病院に来てくれ、と言った。
あたしは、いやだ、と言った。
もう父とは係わり合いになりたくないと思っていたし
父の顔なんか見たくも無かった。

母は相変わらず電話の向こうから金切り声をあげ続けていた。



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