...ねね

 

 全てフィクションです

【父との秘密】 - 2002年09月15日(日)

あたしはまだ叩きつけていた。
顔にはまだ笑みが残っていた。
そしてもはや蹲ったまま動かない父と
ドアの陰からおろおろしながらただ見ている母。

力いっぱい振り下ろした木製の椅子がベキッと嫌な音を立てた。
と同時に母が突然声をあげた。

「やめて!死んじゃう!死んじゃう!」

あたしは後ろも振り向かずに「死ねば」と呟いた。
すると、後ろから突然掴みかかられた。
母があたしの腰の辺りを抱きすくめてきたのだ。

「やめて、お願い、やめて!もうやめて!」

「なんで止めるのよ!こんな奴生きてたってなんになるのよ!
 こんな犯罪者、死んでくれた方が世の中の為よ!」



あたしがそういい切ると、母は顔を真っ青にしながら叫んだ。

あんたは嫌いかもしれないけど、私には大事な人なの!
好きなの!死んだら困るの!
生活だってあるし・・・
どうしてパパの言う事が聞けないの?
どうしてお前もあの子もパパに逆らってばかりなの?
どうして家族が幸せに暮らしてるのを壊そうとするの?

最後の方には母の声は小さくなって段々と聞き取れなくなって行った。
涙声であたしに訴えかけている。
どうして逆らうって…この人は…自分の言ってる事が分かっているのか。
あたしが今までどんな目に遭ってきたのか分かっているのか。
母の女の部分を垣間見たような気がした。
男無しでは生きていけない母の一番汚い所を見たような気がした。



この狂気の男の妻はやっぱり狂気に犯されている。



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