...ねね

 

 全てフィクションです

【父との秘密】帰っておいで - 2002年08月16日(金)

「帰っておいで」

そう言われてあたしと弟は、また荷物をまとめて家に帰った。

父と母が、この10日以上の間、何を思い
何を話し合ったかは知らない。
あたしは何も聞かなかったし、母も何も言わなかった。
ただ、弟はただの別居だと聞いてなぜすぐに離婚しないのかとごねたが
あたしは父と一緒に生活をしなくてもいいというだけで
離婚か別居かという事はたいして問題ではなかった。

あたしと父の事が弟によって発覚してからほんの2週間
急な出来事なので、生活の事情やすぐに離婚するわけには行かない
理由があるのかもしれないし。

おまけに母の顔は疲れていて生気が無く
何かを追求できるような雰囲気でもなかったのだ。


弟と一緒に2階に上がる。

「姉ちゃん、ちゃんと別れてくれって言わなきゃ駄目だよ」

うん。でも、これは夫婦の問題でもあるから。
どうしてもあたしがイヤだって思ったら、
あたしが出て行くよ。

あたしの顔も母のようだったのかもしれない。
弟はそれ以上は何も言わずに部屋に帰って行った。
本気で「夫婦の問題だから」などと達観したフリをしたわけじゃない。
これ以上何を望んでいいのか分からなかっただけだった。
母なりに考えて出した答えだろう。
あたしのことを思っての別居だろう。
母も今までのあたしと同じように、今辛い思いをしているはずなのだ。




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