CYMA’S MURMUR

2004年09月17日(金)   『海猫』


『海猫』 谷村志穂著 新潮文庫

久しぶりに、小説らしい小説を読んだ気がする。

普段私が愛読している、村上春樹や江國香織は、
なんというか小説のようで小説でない。
リアリティのない辺りが特に。
現実味がないにも関わらず、
その小説世界の空気感はすごく自分に近いところにあって、
心理的に共感もするのだけれど。
ディテールはリアルでも、総体は御伽噺。
私にとって、村上春樹や江國香織はstoryなのだな。
novelではなくて。
どう違うと聞かれても困るけど。

話を戻して、『海猫』。
函館の風景と言葉が心地よい。
北海道という土地の特殊性もあるのだろうけれど、
出てくる女性それぞれの潔さも印象的だ。

映画化されるらしい。
伊藤美咲がまた主人公のイメージとピッタリ。
佐藤浩一と仲村トオルも悪くないけど、
小説の年齢設定とズレすぎでは?

それはともかく、
人物が丁寧に描かれていて、
地味な(笑)大河ドラマ的雰囲気も漂わせつつ、
やはり「強い女」という裏テーマが訴える力を持っている作品だと思った。

個人的には、一番ロクデナシっぽかった主人公の弟が、
浮き草的にではありながらも、
ちゃんと家庭を築いて平凡にトシをとっていくところと、
主人公の母親の生命力が印象的だった。





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