| 2003年11月27日(木) |
イケメンぞろいの閉鎖病棟 |
閉鎖病棟と聞くとどんなイメージを抱くだろう。 私は任意入院(自分の意志で入院すること)だったので、本来ならば、開放病棟に入るはずだった。しかし、自殺する意志がなくても、リストカットやオーバードゥース(大量内服)の前歴があるため、自殺企図とみなされ、閉鎖病棟に入ることになった。 閉鎖病棟には出入り口に鍵がかかっていて、看護師や医師の許可がなければ鍵を開けてもらい出入りすることができない。
疲れきり、不安だらけの入院だった。でも、私が入った閉鎖病棟はそんな気持ちを吹き飛ばすような明るい場所だった。日中はみんな私服を着ていて、夜になるとパジャマに着替えた。出入り口に鍵がかかっていても、食事や薬の時間以外は自由時間で、ホールで麻雀やトランプをしたり、お菓子を持ち寄ってみんなでおしゃべりをすることもある。入院すると同時に、自己紹介をしてくれる患者が多く、友達もすぐにでき、すんなりとその生活に溶け込むことができた。朝早く目覚めた時はホールで日記を書くことが多かったが、日中の大半は、友人とおしゃべりをしたり音楽を聴いたりしてリラックスして過ごした。
なんと言っても、よかったのは「イケメン」ぞろいだったこと。決してカッコイイだけではなく、カッコイイ=本当のイケメンもいたが、特に男の看護師は優しい人が多かった。
私が好きな順番に並べると、 1、肉まん君 2、ツノッティー 3、ワイルダー小野里 4、カラサワ君
あやかちゃんの好きな順番に並べると 1、ツノッティ− 2、イシピー 3、肉まん君 4、ワイルダー小野里
それぞれ、最初に問診した看護師が担当看護師となり、私はツノッティーだった。 ツノッティーは身長185cmあり、ジョークもかなりおもしろい。イケメンであり、性格もよかったので、みんなにうらやましがられた。私はもちろんツノッティーも好きだけど、なぜか肉まん君が好きだった。肉まん君は決してカッコイイとは言えない。身長も高くない。でも、理由なしに肉まん君がよかった。本当は「筋肉マンと呼んで」と本人が言ったらしいが、前入院していたミカちゃんが「肉まん君」と呼んだので、そのまま「肉まん君」になってしまった。
肉まん君が点滴をしに来た時に「失敗したらゴメンネ」と言われたので、「私は何十回刺されても平気だから、大丈夫だよ」と言うと、チクッとやった瞬間に「ゴメン」と言った。つまり、すぐに漏れてしまった。2回目はすんなり入ったが、しばらく経つと漏れた点滴の跡が青くなって来て、それがウサギの形に見えた。
あやかちゃんに、 「ねえ、この点滴の跡、ウサギさんに見えない?」と言ったら、大爆笑された。 そして、「肉まん君、ウサギさんにしてくれてありがとう」と言う気持ちになった。ほとんど、看護師相手に遊んでいる状態だったかもしれない。
薬を飲む時間には、ホールに水を入れたコップを持って集まる。薬をため込まずにその場で飲む事を徹底させるためだ。粉薬をうまく飲めない人は、アーンと口を開いて飲ませてもらっていた。私は真面目な看護師にはついイタズラをしたくなる。イシピーの時に、アーンと口を開けると「えっ?」という表情をした。「冗談ですよ」と笑うと「飲ませて欲しいのかと思った」とイシピーは言った。 カラサワ君の時もアーンと口を開いてみた。「えっ?あっ?はっ?」みたいな言葉を発したので、またまた「ジョーダンで〜す」とふざけて笑った。
こうやって楽しく過ごしていても、頭皮のかさぶたをはがして血だらけになり、ナースステーションで消毒をしてもらうことが何度もあった。ツノッティーの時も肉まん君の時も、イシピーの時も、小野里さんの時も消毒してもらいながら泣いた。「しみる?」と言われたが、もちろんしみるから泣いているわけではない。
一番つらかったのは、先生が鎮痛剤を替えてくれなかったこと。出されている鎮痛剤がどうしても効かなくて、先生に何度訴えてもダメだった。私は一週間頭痛がひどくて食事がとれずに点滴をすることになった。 「あなたは薬物依存症です」と言われ、「頭痛薬を飲むのをやめなさい」と言われたが、「だったら、この頭痛を全部先生にあげます」と言ったこともある。
小さな中庭のチェリーセージをじっと見ていたら、鍵を開けてくれた看護師もいた。そこで少しは外の空気が吸える。好きな花の手入れができた時は本当にうれしかった。
つらいこともあった。泣いてばかりの夜もあった。でも今はみんなと合宿をしていたような楽しい日々が思い出される。
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