| 2002年10月08日(火) |
スローリー尾林、「靴がないんです」 |
先週の金曜日のことだが、スローリー尾林(患者のニックネーム)が、 「看護婦さん、靴が無いんです」と言う。
年寄りの靴はどれも似ている。尾林さんの靴は茶色で、同じ形で黒ならあるのだと言う。多分その靴の持ち主が間違えて履いて帰ったのだと思うが、尾林さんがそれを履いて帰るわけにはいかない。
もう1人の看護婦と必死に探したが、結局見つからなかった。 「こういう時、どうしてるんですか?」と聞くと、 看護婦Sさんは、 「スリッパで帰ってもらうしかないのよね」と言う。
「尾林さん、いつも何で帰ってるの?」と聞くと、 「あの〜電動の〜・・・」 「電動車椅子?」と聞くと、 「そうです」と答える。
電動車椅子にスリッパは危ないんじゃないかなぁ。
そこで、私はナースシューズをもう一つ持っていることを思い出した。 そして尾林さんに、 「ナースシューズをもう一つ持っているの。スリッパで帰るよりは危なくないと思うから、今持ってくるね」と言った。
二階からナースシューズを持って来る。 「足のサイズは何センチですか?」と聞くと 「23センチです」と答える。 「私は、23,5だから。尾林さん靴下はいているからちょうどいいかもしれないね」と言って、ナースシューズをはかせた。
「ちょうどいいわ」と尾林さんは喜び、私に何度もお礼を言って帰って行った。
そして、今日、尾林さんに呼ばれた。 「先日はありがとうございました。若い方だから何がいいか迷ったんだけど、コーヒーなら飲むかなぁと思って」とコーヒー豆を持って来てくれた。
お礼なんて考えても見なかった。私はただ、予備のナースシューズを貸しただけなのに。 でも、これが患者の気持ちなんだろうな、と思った。
「尾林さん。今日はありがたく受け取りますけど、もうこんなことしないで下さいね。今回は遠慮なくいただきます。ありがとうございました」と言うと、
「本当にうれしかったんですよ。こちらこそありがとうございました。助かりました」と、尾林さんは何度も頭を下げた。
看護婦としては、お礼なんかいいのにと思うのだが、父や母が入院した時はやはりお礼を考える。それが人間としての当たり前の心なのかもしれない。
そうしているうちに、3歳の安田良治君(仮名)が来た。 「久しぶりだね〜」と声をかけると、
「わ〜〜〜〜〜!!!抱っこ〜!」と言って、私のところにかけより両手を広げた。この子は、「悪ガキ」と言われていた子である。だけど、何度も接しているうちにかわいいと感じるようになった。レントゲンを撮り終わって、台から降りるときも、 「抱っこ!」 と言う。
こうしてなついてくれた子も、もうすぐ診療が終る。
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