| 2007年08月28日(火) |
「ボルベール <帰郷>」 |
2006年スペイン 監督 ペドロ・アルモドバル キャスト ペネロペ・クルス カルメン・マウラ ロラ・ドゥエニャス ヨアンナ・コバ チュス・パンプレアヴェ
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続くアルモドバル監督の女性賛歌三部作。 「オール〜」も「トーク〜」もとても印象に残る作品だったので、最終章のこの作品も絶対劇場で観ようと決めていたんです。
3つの作品どれも良かったんですけど、今回のこの作品はこれまでの作品のどこかちょっとクセのある感じは弱まって、とてもすーーと入ってきて、そしてどーん!!と心の中に座り込んじゃうような。あたたかく、大きく包んでくれるような、そんな作品でした。
まず、冒頭の故郷で両親のお墓を掃除するシーン。久しぶりにあった人々との抱擁!そしてあの大きな音をたてて頬にかわすキス・キス・キス!「ちゅ!ちゅ!ちゅ!!ちゅ・ちゅ!」ってほんとにとっても大きな音を立てるんですよ、これがなんともユーモラスというか、楽しくて。(しかも人によって回数とか違うし・・苦笑)もうこのシーンだけで、この映画が好きになりそうでしたよ(笑)
大輪の花のように美しいライムンダ(ペネロペ)、胸の谷間もとってもセクシーで思わず見蕩れちゃうほど(笑)でもお尻のお肉は足りない・・って付け尻してるとか。(!)そんな彼女が見せる母親としての顔、そして娘としての顔。娘を守るためにたくましく、毅然と力強い彼女が、母との再会の時に見せた壊れそうな、あの泣き顔が忘れられない。 目がとても印象的でしたね、ペネロペ。マスカラもくっきりな彼女の瞳にこぼれるかのような涙が、みるみるうちに溜まっていく・・・。見てるだけで、こちらの感情も揺さぶられてきて。
ライムンダと娘を襲った辛い出来事や、過去の事件。そこにはあまりにも悲しく繋がっているものがあってなんともいえない気持ちになってくるのだけれど、それなのに何故だろう、そういう痛みが大きなものに包まれて、見終わったあとにはなにか力強く、暖かい気持ちにさえなってくる。 頭を挙げて、しっかりと生きていけばいい!とドン!と後押ししてもらったような。
印象的なシーンがたくさんあって、挙げきれないくいらいだわ。 母親に教えてもらった曲「ボルベール」を歌いあげるライムンダと、風に乗って聞こえてきたその歌に思わず涙を浮かべる母イレネのシーン。 夫が好きだったという川のほとりに立つライムンダと娘パウラのかわす言葉。ここは思わず涙が溢れましたね。ただ隠すだけの場所かと思ったのに・・・。なんていう大きな、優しさ。
母親の香り・・・は楽しかったですよね。「おなら」!ですもん(笑)みんなで笑ってるとイレネも一緒に笑ってしまって。 ベッドの下からすまなさそうに顔を覗かせるシーンも好きだわ。
赤!ドキッとする、鮮やかな、あたたかな、赤。 「トーク〜」が白の印象の映画なら、この作品は「赤」のイメージかな。 床に流れる血をすいとるキッチンペーパーに吸い込まれる赤。 あわててガウンを着込んだライムンダの首筋に一筋の赤い血。
パーティの日のライムンダとパウロの赤い服。 そしてイレネの隠れたベッドにかかる赤いカバー。 女性達の悲しみと、逆に溢れるような力強さと、両方を感じさせてくれる「赤」が印象的に使われていました。
エンドロールに鮮やかに咲き乱れる花々も素敵でしたね。
ぺネロペをはじめ女優さんたちもみんな魅力的でした、母のイレネの茶目っ気ある様子も可愛いかったし、地味だけど姉ソーレ!彼女がまた、私はとっても好きだわ。
三部作、最終章は、女性への優しさと、母親、そして故郷への愛と、生きていくことへのエールがこもったあたたかい作品でした。
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