2004年韓国 監督キム・ギドク キャスト イ・スンヨン ジェヒ クォン・ヒョゴ チュ・ジンモ チェ・ジュンホ
まず、なによりこの邦題は素晴らしいと思う。 韓国の原題は「空家」そして英語では「3-IRON」(登場するゴルフのアイアンからなんでしょうけど、3という数字も意味があるような・・気もしたり)。 その原題にこの「うつせみ」をあてた方のセンスに拍手を送りたいです!
抜け殻のような・・中身のない・・人生を送っていた人妻ソナ。 裕福だが独占欲が強い夫に暴力をふるわれ、ひとり家に閉じこもってひっそりと生きている彼女。 そんな彼女の家にある日侵入してきたのは、留守宅を探し空っぽな家を見つけては侵入し住民が帰ってくるまでの日々をそこで過ごす・・不思議な青年テソクだった・・
全く会話を交わすことなく・・しだいに心を通わせる二人。 無口な方は大好きですが・・ここまで喋らない主人公達も珍しい・・というか・・すごい。テソクは結局最後まで一言も発しませんでしたよね。 なのに。伝わってくるもの・・流れてくるものが・・静かに、でもしっかりと感じられました。
いくら空っぽな家だからといって留守中に勝手に上がりこむなんて・・決していいことではないんだけど、綺麗に片付けたり(その家の)壊れているものを修理したりするテソクの行動に・・なんだか癒されるものを感じてしまうのは何故なんだろう。(あ、でも洗濯されるのは・・ちょっと嫌かも 苦笑) 自分達の家でもない場所で、寄り添うように過ごしていく二人に対して、留守宅に帰ってきた夫婦(たち)は決して幸せそうじゃない様子なのが(あのちょっとお寺風なおうちの人は良かったけど)・・なんとも皮肉っぽい。 あ、あの夫の方・・ヒドイ人なんだけど・・とっても哀れにも思えたな。ほとんど一人で喋っていた彼。 喋れば喋るほど・・どんどんと離れてゆく心。
でも・・後半ああいう展開になるとは思ってもみませんでした。 囚われたテソクのあの行動、そして彼を待つソナの取る行動・・離れた場所にいるはずの二人なのに・・互いにまるで自分が透明な存在になったかのような。 最後の、あの驚きの、そしてなんとも美しいラブシーンまで、どんな風に解釈したらいいのか・・なんていうことはこの際置いておこう・・っと。 考えることなんてやめにして、とにかく言葉のない世界で、眼差しをかわす二人を息をとめて見つめていることにしようと思う。 そこに静かに存在する・・たしかなものだけを感じたら、現世の姿かたちなんて意味をなさないような・・そんな気までしてくる。
キム・ギドク監督作品、初めての鑑賞でしたけど・・う〜ん、なんだかこれは忘れられない・・ですね。 他の作品もこれからどんどん見ていきたいです。
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