瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
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2007年08月07日(火) 「過去のない男」

2002年フィンランド・独・仏 監督アキ・カウリスマキ 
キャスト マルック・ペルトラ カティ・オウティネン アンニッキ・タハティ ユハニ・ニユミラ カイヤ・パリカネン サカリ・クオスマネン マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ

レンタルショップの企画コーナー(?)「人生を見つめて」の棚で見つけました。
2002年のカンヌでグランプリと主演女優賞を受賞したそうですよ。
実は、カウリスマキ監督の作品を見るの、私は初めてです。

夜の列車を降りた男がたどり着いたのは、ヘルシンキ。
公園で眠りこんでしまった彼は、暴漢に襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。一度は死んだかと思われた男は、なんと奇跡的に意識を取り戻すのだが、過去の記憶は、全て失ってしまっていた・・・

なんとも独特のムードを持った作品でしたね。
夜の列車、公園。そしてあの病院のシーン、驚きの始まりでしたよ、もっと穏やかに始まるのかなあ・・って思っていたので。
思わずヘルシンキ・・酷いとこだなあ・・って思ってしまったくらい(苦笑)
まるでミイラ男のような姿でぷちぷちと点滴を外して起き上がるシーンには、思わず・・え?これは・・ホラー・・などと思ってしまったり。

男は記憶を無くしてしまうのだけれど、周りの人々に助けられながら意外に逞しく、淡々と生きてゆくんです。
誰も腫れ物に触るようには扱わない・・むしろお金を巻き上げられたり・・の厳しい現実もあったりするくらいの。
みんな暮らしてゆくのが精一杯の人々ばかりだから・・彼によけいな、たとえば名前をつけたりもしないんですよね。
「記憶がないくらい、どうってことない。人生は後ろ向きには進まないんだ・・進んだら大変だ」
男を助けてくれた一家の主人の言葉なんですが、なんだかこの言葉が全てを物語るかのようでした。
過去がないまま、名前もないまま、彼は住む場所を作り(すごく心地よくなってビックリ!ジュークBOXがいいな〜)働く道を探し、そして一人の女性と恋をして。

この女性を演じるのはカティ・オウティネン。カウリスマキ監督の常連女優さんだそうですが、このひとがまた独特の風貌ですよね。硬くて一見恐い感じなんですけど、だんだんと少しづつ・・柔らかなところを見せてくれて。

後半、男の過去が明らかになるのですが、このあたりも特に力みすぎた感もなくて淡々と描かれているのがいいですよね。
ここで無理やりぐいん!と盛り上がられたら・・まるっきり別のものになってしまいます。
肩の力を抜いた、不思議な心地よさを感じさせる作品でした。

悪徳警官から預かった犬の名前が「ハンニバル」これには思わずくすって笑ってしまいました。
そうそう、それから最後に男がまた列車で帰ってくるシーン。列車の中の食事が日本酒にスシって?流れる音楽も日本語だし・・これって?

監督さんの他の作品も見てみたいな・・そんな風に思える作品でした。


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