2001年フランス 監督ルネ・フェレ キャスト ドモニク・マルカス マリオン・エルド ルネ・フェレ ジュリアン・フェレ ロラン・ソフィ
「夕映えの道」 なんだかとっても「地味映画」っぽいタイトルだゾ・・と思わず手に取ったDVD、原題は「ルトレ通り」。パリ20区にあると聞いて思わず「パリ・ジュテーム」のパンフの地図を広げてみたりして(笑)
バツいち、今は若い恋人がいて、仕事も順調なキャリアウーマン、イザベル。 ある日、薬局で店員にくってかかる老女と出会い、彼女を家まで送っていくことに。狭く古ぼけたアパートで漏電しそうな電気にも構わず、孤独に暮らす老女マド。なぜだか彼女のことが放っておけないイザベルは、その日からマドのアパートを訪ねるようになる・・・
年齢も置かれた場所も違うふたりの女性。その出会いと触れ合いを通して、老いてゆくこと、生きていくこと・・をじっくりと暖かく見つめた作品でした。 とても自然なんですね、描き方が。決して二人とも無理をしていないというか・・ マドはマドで、今まで孤独に生きてきた、そしてプライドもある。そんな生き方からイザベルの好意を素直に受け取ることが出来ない。仏頂面で(この顔がなんともいえず・・いいんですよ〜)修理に来た電気屋を追い出したり。 イザベルに対しても「私のためじゃない・・あなたの自己満足のためにやってるんだ!」とハッキリと言う。 でもそれに対してイザベルも、言葉を飾ろうとしないんです。「そうよ!」って。 彼女自身もどうしてマドが気になるのか説明できない・・マドを抱きしめたくなったり・・反対にもう離れた方がいいのか・・と思ったり。 心を許して思い出話を笑いながら語るマドに私もほっと嬉しい気持ちになったり・・かと思うと誰をも拒絶しようとする頑なな態度に悲しくなったり・・ 決して綺麗ごとではない、ふたりの様子がいいんですよね。
イザベラを拒絶しておいて、でも実はとても孤独を感じているマド・・のもとに、もう行くのはよそう・・と思いながらもイザベラがやってくるシーンがあります。 その時にイザベルは思わずマドの椅子に座りこんで眠ってしまうんですね・・とても疲れた様子のイザベルを見つめるマド・・このシーンがとても印象的でした。強く、(自分よりも)うんと若いイザベル、でも彼女もまた日々を精一杯生きている・・イザベルを見つめるマドの表情に、頑なな心が溶けていくかのように・・思えました。
この映画、実はとても低予算で作られたものだそうです。撮影に使われたのは監督自身が住んでいるルトレ通り。 キャストも、マド役は新聞の広告に応募してきた舞台女優ドミニク・マルカスを起用、イザベル役は監督の隣の住人マリオン・エンド。作品に出てくるイザベルの家(いい雰囲気、バスルームも素敵!)も実際彼女の家なんだそうです。 監督自身もイザベルの元夫役で登場、若い恋人はなんと監督の息子さん! デジタルカメラで撮影し、近隣の協力のもと完成したという・・まさに手作り・・の作品なんですね。 でもそんな制作費の不足を作品は微塵も感じさせない、むしろ、ルトレ通りの美しさを知り尽くした監督ならではの映像に見蕩れ、ふたりの女性のとても自然な演技に引き込まれました。 監督の友人が担当したという音楽も、ドラマティックじゃない、どちらかというと単調なメロディなんですけど、これがまた!この映像にはぴったりでした。
ラストシーン、陽だまりのベンチで「今が一番しあわせ・・」と呟くマドにイザベルがこう答えます。 「信じて、あなたの幸せが私の喜びなの」 この言葉を聞いた時のマドの、あの表情。堪えきれないものが溢れてくる・・ この表情に私も思わず堪えきれないものを覚えましたよ・・・
人生を優しく、暖かくしてくれるもの・・それはやっぱり自分を思ってくれる、誰かとの時間・・なんでしょうね。
地味映画としても紹介させていただきました。
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