1993年フランス 監督 フィリップ・リオレ キャスト ジャン・ロシュフォール ティッキー・オルガド マリサ・パレデス ラウラ・デル・ソル
搭乗券以外の所持品をすべて盗まれてしまった一人の男アルチェロ。降り立ったフランスの空港でわけを話すが、年末であるということも災いしてどうにもならず、夜の空港に足止めに。 長いすで眠れない夜を過ごす男に声をかけたのは一人の少年。少年に連れられてトランジットゾーンを訪ねた男は、何ヶ月、何年も・・そこで暮らす人々と出会う・・
「ターミナル」以前にこういう映画があったとは!!知りませんでした。
夜の空港。入国管理の列に並ぶ人々の足・・さまざまな靴・・その中に・・なぜか白い靴下で歩く男が・・・ この冒頭のシーン、面白いですね。ここでまず引き込まれます。 彼がわけを話し始めるシーンでも、2つの国籍のこと、住所のこと、そして妻の国籍!!入管の役員と彼のやりとりが可笑しくて思わずくくっ・・と笑ってしまう。 しかし・・彼アルチェロにとっては笑い事なんかじゃないわけですよね。 融通のきかない役員に「そこの長いすで待ってるように」(この長いす・・云々の台詞はあとでもいろいろ出てきてこれも上手い)といわれ、夜を過ごすけれども眠れない・・ そして出会ったトランジットゾーンの人々。不正入国、国籍剥奪・・さまざまな理由からそこに住まざるを得ない・・・男や女や少年や。彼らのキャラクターが・・また魅せるんですよね。 どこの国にも属せない、どこでもない空間に住む彼らの、諦め、希望、強がり・・絶望・・そんな表情を私達はアルチェロと一緒に見ながら・・なんともいえない気持ちになってくるのでした。
明日強制帰国させられるという少年に夜のパリを見せに行くシーン。大晦日のパリの夜景・・・見守る・・エッフェル塔。 バスの窓から夜景を見つめる少年の瞳に思わずもらい泣きしてしまいました。 新しい年を迎えた女性に「冥王星の今年、きっといいことがある」この優しい台詞も嬉しい。
真っ赤なプレゼントの箱を抱え、黄色い長靴を履いて空港をゆく姿の可笑しさ。 行き違いになる奥さんとのシーンや逃亡劇の滑稽さと、どうすることも出来ないものを知った時に胸に湧き上がる思い・・・
最後まで・・いろんな思いが残る(ハリウッド映画なら、きっと最後にあの正体不明の男に何か言葉を話させるんじゃないだろうか)映画でした。 あれから彼らはどうなったんだろうか・・いや、これからどうするんだろうか・・。黒板の電話番号を見つめる女性の瞳に見えたものは? そして、アルチェロと少年は・・・ こんな風に・・映画が終わっても・・そこで全てが終わるんじゃない・・。思いが漂う・・映画感が好きなんです。 ここに登場した人々のこれからに思いを馳せる・・余韻の漂う、映画でした。
検索したら結構有名みたいでしたけど「ターミナル」よりは地味かな・・と思い、地味映画推進委員会お薦めの映画に挙げさせていただきました。 「ターミナル」も良かったけど、個人的にはこちらの方により惹かれます。 ジャン・ロシュフォールの皺も魅力的(笑)
それにしても・・あのうさぎ!!本当にフランスの空港の滑走路は穴だらけ!?なの〜? トランジットゾーンの人々の朝食のシーンも印象的でした。あ、あの奥さんが泊まったホテルのカフェオレプラスクロワッサンパック入りも(笑)奥さんはと〜っても恐くて怒りっぽくって・・と言うキャラでしたけど・・あのカモを膝に乗せてる姿が可愛くて可笑しくて・・。
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