瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
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2007年03月25日(日) 「ブルーベルベット」

1986年アメリカ 監督デヴィット・リンチ
キャスト カイル・マクラクラン イザベラ・ロッセリーニ デニス・ホッパー
ローラ・ダニー

まわるわ〜、この曲「ブルーベルベット」
鑑賞してからもう3日ほど経つのに、このなんともいえないムードをたたえた曲がまだ頭の中から離れません。
ボビー・ビントンの「ブルーベルベット」1960年代前半のヒット曲。この曲から監督が連想し、脚本を書いた・・というのですから・・・まずこの歌有りき!!なんでしょうね。

大学生のジェフリーは、倒れた父親を見舞った帰り道、野原で切り落とされた人間の片耳を見つけた・・
知り合いの警官にその耳を届けたジェフリーだが、警官の娘サンディから耳についてのある情報を聞いてしまい、好奇心を押さえきれずに・・謎の中に飛び込んでしまう・・・

なんでしょうね〜、この独特の感覚。
日常と非日常、見てはいけない世界・・光と闇。
あの片耳のアップになって・・その耳の穴の中・・・見てはいけない世界の中に連れていかれてしまうような・・そんな感覚でしたね。
主人公ジェフリーのあまりの好奇心ぶりに・・「ダメ、ダメ・・やめときなよ〜〜」と心で呟きつつ・・でもしだいに現れる、あまりにエキセントリックな人々や、暴力的な世界に・・・いつのまにかくらくらしながらも目が離せなくなってしまうんですね。

青い空、白いフェンスに赤い薔薇が咲く・・冒頭は、まるで絵画のような(それも写実的じゃない、どこか不思議に強烈な)シーンから始まるこの映画、色がとても印象的でしたよ。監督の美術センスでしょうか・・
主人公ジェフリーが訪ねる歌手ドロシーのアパートの階段は、底のない闇のように暗く。そこに鮮やかに、ドロシーのブルー(ベルベット)のドレスや、赤い衣装が浮かび上がる。反対にサンディの衣装は、甘く優しい色合い。
堅実で明るい日常(サンディ)と、刺激的で、危険な、でもほおってはおけない魅力をもった非日常(ドロシー)。ジェフリーはふたつの世界を行き来するわけですね・・アパートの暗い、暗い階段はまるで非日常に通じる・・道のようです。
ドロシーを演じるイザベラ・ロッセリーニの、悲しい、崩れたような魅力。まぶたの上にしっかりと塗られたブルーのアイシャドウが強烈です。
サンディは、ローラ・ダーン。悪く言うと洗練されてない、野暮ったい無垢さ。清潔でしっかりとした彼女の容姿は、この役にぴったりでしたよね。(実は彼女を見ると「ジュラシック・パーク」の時も思ったんだけど・・テニスのグラフ選手を思い出す私・・笑)
ドロシーに暴力をふるうフランク役はデニス・ホッパー。いっちゃってる演技は申し分なし・・の怪しさでしたね。
ジェフリーのカイル・マクラクラン!懐かしい〜!!線の細い、硬質な美しさ。そんな彼がサンディの前で、裸のドロシーを支えざるを得ない・・ラスト近くのシーン・・あのシーンは良かったですよね。

死体の謎や、ドロシーの監禁された息子・・いろいろな謎は、はっきりとは解明されないままなので・・ん?結局誰がどうして・・・といろいろと思いは残りますが、きっと謎を解明する映画ではないんだろうなあ・・って思いました。
見ている間は、結構腹も立ちながら(警官に任しとかんかい!!とか、無茶しすぎ!!とか)見た映画でしたが、これが見終わったら、なんだか不思議に魅力を感じてしまうのは何故なんでしょう?これがリンチマジック?(彼の映画は2本しか見ていないので言えませんが・・)
だってね・・まさかああいうラストシーンになるとは・・思いませんでしたよ。
耳の穴から出て、日常に戻ってきた?

特典映像の中で「いい映画というのは、見るたびに新しい発見があって、何度見ても飽きないもの」と監督は語っていました。
なるほど〜、たしかに・・クセになる魅力を秘めた映画でした。

次はこの監督のほかの作品をぜひ観てみたいな・・そう思いました。


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