| 2007年03月08日(木) |
「パフューム ある人殺しの物語」 |
2006年ドイツ・フランス・スペイン 監督トム・ティクヴァ キャスト ベン・ウィショー レイチェル・ハード=ウッド アラン・リックマン ダスティン・ホフマン カロリーネ・ヘルフルト ナレーション ジョン・ハート
原作を読んで以来、楽しみにしていた作品です。 あの、香りの世界がどんな風に映像化されているのか・とても難しいと思うんですよね。 でも、見事でしたね。パリの街のさまざまな匂い。グルヌイユが生まれた市場の、あの生臭い腐ったような匂いや、人々の間を縫って歩きながら彼が嗅ぐたくさんの匂いに・・こちらまで酔ってくるようでした。 初めて嗅いだ少女のかぐわしい香りに引き寄せられるシーンには、ドキドキしましたね。そして・・あの嗅ぎ方・・香りを逃したくない・・とばかりに手のひらで・・。可哀想なんだけど・・あまりに少女が眠っているかのように綺麗で・・ただただ見つめてしまいました・・
グルヌイユの師匠には、ダスティン・ホフマンの登場です。香水調合師、白塗りに思わず笑ってしまったわ。あのカツラも。 香水をハンカチに降りかけてさ〜〜っと振るんですよ、そして嗅ぐあのしぐさ・・その時、空中に舞う香りを思わず見ているこちらまで嗅いでしまいそうになる・・ああいうシーンは映像ならでは・・の面白さですよね。 グルヌイユが作った香水を嗅いだ時に広がる、甘い花と美女のキスの世界(笑)や 真っ赤なばらを山ほど蒸留するシーンの美しさ、鮮やかさとか。
ちょっと先のシーンになりますが、映像的にとても良かったと思うシーンは他にもありました。グラースの街(綺麗でしたね、ここの様子も。一面のラベンダーや・・)のリシの屋敷でのローラの誕生日。迷路のような生垣の中でかくれんぼをして遊ぶシーンの怖さ。アラン・リックマンのお父さんが(良かったですね!さすがアラン!)彼女を呼ぶんですよ「ローラ」って。あそこは本当にドキドキしました、原作にないシーンだけど、ああいうのは映画ならでは・・です。
逆に映画ではやっぱり難しいなあ・・って思うのは、ほとんど何も気持ちを語らない主人公の・・でもあまりにも強烈なその個性を(原作では文章で心中を表すことができるけど)ナレーションだけで表す・・っていうのは大変だわ〜ってこと。 もちろん、ベン・ウィショーのあの瞳は・・とても印象的でしたけど!そして、あの鼻、猫を思わず肢体。 だから・・でしょうか、原作の彼とはキャラクターを少し変えていたように思うのですけど。原作では、自分のいるこの現実の世界にどこか憎しみを抱き、あくまで香りの世界に生き、匂わない自分がまとう匂いを作るために罪を犯すグルヌイユ・・って感じたんだけど、でも映画の彼はどことなく・・何か他のものも・・たとえば・・自分の孤独を哀しむような・・切ない瞳が揺れていたように思えました。 あの、処刑場で果物がこぼれ落ちた時に彼の脳裏に甦った記憶、あのシーンがとても印象的でした。ローラもとても美しくてあどけなくてよかったのですけど、あのプラムの少女、忘れられないですよね。あの時グルヌイユの目から落ちた物・・ビックリしました。あの一滴には・・もしかしたら香りがあったのかもしれません・・。
ただ最後の残り香・・は、原作ほどの強烈なものがなかったような気がしました。 処刑場のシーン、愛をかわす人々の姿が圧巻すぎて、グルヌイユの天使マジック(?)が・・こちらに届かなかった・・。 そして、彼が最後に帰りついた場所での、あの人々の狂乱!あのシーンは原作を読んでいない・・とちょっと分かりにくいのでは?っと思いました。
香りの溢れ返る世界に、ただひとり匂いを持たずに生まれた彼が、身にまとう完璧な香りを作り上げた時。全ては・・そこで終わってしまったんでしょうか。 彼にとって生きる意味、生きる価値は、もうこの世界には見出せなかったのでしょうか・・・
原作を読んだ後もそうでしたが、映画を見た後も、なんだか自分のまわりの匂いを思わずクンクン・・って嗅いでしまいそうですよね。 鼻には自信がありますよ、アレルギーも花粉症もないですから。鼻づまりもめったに経験しないし・・! でも香りって・・いい香り、嫌な香り・・っていうのもありますけど、何より肝心のは、適度な香り・・ほのかな・・どこかから漂ってくる・っていうくらいのが一番いいな・・って思いません?薔薇の香りでもむせ返るようだと・・苦しい(苦笑)つけすぎの香水も(笑) ちなみに、私がこの映画を見た時は・・強烈なカレーポップコーンが匂ってきて・・・・「パフューム」の香りの思い出が・・カレーの香りとともにあるとは・・(苦笑)
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