| 2006年11月28日(火) |
「幸福(しあわせ)」 |
1964年フランス 監督アニエス・ヴァルダ キャスト ジャン=クロード・ドルオ クレール・ドルオ マリー=フランス・ボワイエ
森へピクニックに行く家族。花を摘み、午後のまどろみを楽しむ・・ ルノワールの絵のように美しい映像とモーツアルトの音楽。 夫は妻を愛し、妻も夫を想い、あどけない子どもたちをいとおしむ。幸福を絵に書いた「家族」の姿。
なんて美しい映画だろう。 そしてなんて・・なんて!なんて!!!見終わった時、しばらくは言葉が出てこなかった。 この衝撃・・怖さ・・じわじわじわじわーーーーーー深いところからやってきましたよ。 こんなに静かに怖い気持ちになった映画って初めてかも。 人間って、人生って。しあわせ・・ってなんだろう。 自分の存在についてこれほど心細い思いをしたのは初めてでした。 ふぅーーーと思わず大きな息を吐いちゃいましたよ。
愛は止めることが出来ない・・妻を心から愛しながら、出張先で出会ったエミリーもまた愛してしまう夫フランソワ。 二人の女性を愛し、また彼女たちに愛されているフランソワは、そのあまりにも素晴らしい幸福感をあろうことか妻に打ち明けてしまう。 妻は夫が幸せであるならとそれを受け容れ「より彼を愛する」ことを誓うのだが・・・
なんだかこう書くと、かなり酷い勝手な三角関係・・って感じなのですが(いや、実際、こんな夫はひどい)それがね・・なんだかそう思わせない・・というか、あまりの彼の幸福感にこちらまで酔わされてしまったのでしょうかね、そっか〜、幸せなんだ〜〜などとありえない風に思ってしまったりするのですよ。 けれども・・・その後の出来事にだから言ったじゃない〜〜っとにわかに突っ込みも入れたりして(苦笑)
やがて季節はうつり。 森は秋。お揃いのニットを着て可愛い子どもたちを連れる夫婦。 幸福を絵に書いたような・・家族の姿がそこに・・・
何が違うというのだろう? 愛し合うふたり、あどけない子どもたち。 家は美しく飾られ、テーブルの上には花々。 アイロンはきちんとかけられ、ベッドの上にはクッションが並べられる・・・
何が変わったというのだろう? 例え、何かが変わったとしても、何かが違うとしても。 そこに見えるのは・・幸せな家族の姿・・そのものでは?
この美しいラストがもたらす余韻・・・・う〜〜ん、これは忘れられそうにないですね。大げさでなく、人生で忘れられない映画の1本ですよ、これは。
それにしても美しい映画ですよね。柔らかく優しい色彩。 女性たちの服の美しさ。 画面が変わってゆく時に、一瞬包まれるカラー。 こんなに美しいのにね・・いえ、美しいからこそ・・・。
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