瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
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2006年09月23日(土) 「美しき運命の傷痕」

2005年フランス 監督ダニス・タノヴィッチ
キャスト エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール マリー・ジラン
キャロル・ブーケ

22年前の不幸な出来事により父親を失った三姉妹。
成長した三人は、今、それぞれに悩みを抱え、愛の地獄でさ迷っている・・愛の地獄・・・ですよ、そういうコピーがついているんです、すごいな。
長女ソフィは夫の浮気に悩み、次女セリーヌは恋にも臆病な日々、そして三女アンヌは不倫関係にあった男性との別れをどうしても受け入れることが出来ずにいる。

ソフィの絶望・・夫と愛人を尾行したホテルで、螺旋階段を見上げるシーン。曲がりくねる螺旋階段は、まるで彼女の苦悩の日々のようで。部屋を突き止めた彼女が(夫が帰ったあとで)眠る愛人の頬にそっと顔を寄せるシーンは、なんともいえないくらい怖かった。ただ乗り込んでゆくよりずっと怖かった。
エマニュエル・ベアール・・すごい。夫になじられて、逆に彼に詰めより、自ら服を脱いで彼に迫るシーンも女としての情念がこもってましたね。いや、脱ぎっぷりも見事です(あんなに細いのに、あんなに胸が・・コホコホ・・・)
出て行った夫を見送りながら(夫が愛人から貰ったであろう)グリーンの葉をむしるシーンも印象的なんだけど、一番強く残ったのは、夫に拒否された彼女が静かに床に下ろした小さな足・・華奢な小さな足が静かに床に下ろされる・・なんていうか・・ぐぐ・・っときましたね。

一番若いアンヌ・・彼女の恋も激しい。別れを告げられても感情を押さえることが出来ない。ついには不倫相手の家にまで押しかけてしまう・・見苦しいほどの感情の高ぶり。他のことは何も見えない、ほとばしる若さ・・マリー・ジランも見事です。
彼女の相手の大学教授・・年も親子ほど違う・・もちろん彼女だって分かっていたことだけど、あまりにも無責任というか、最後に選んだ道も・・。

そして次女セリーヌ。最初に登場した彼女はまだ幼い少女でした。
母親と一緒に父の勤める学校を訪ねた彼女。ふたりが階段を駆け上がってゆくあのシーンの足音、それはまるで運命の階段を駆け上がるかのようでしたね。
成長した彼女は、他の二人の姉妹と比べると地味でおどおどしてて孤独な・・。でも実は、彼女の出てくるシーンこそが、常にこの映画を動かすシーンになっていることに気付きます。最初のシーンもそうだし、母親の世話をするシーン、そして一人の男性との出会い・・。彼女の勘違い・・臆病なのに大胆でびっくり(苦笑)
ミルクチョコでないといや!という母親とのシーンや、なんとも間の悪い所掌さんとのシーン、情念がうずまくような画像のあいだに盛り込まれるふふっ・・と息を抜くシーンも彼女のシーンが多かったですよね。

母親役のキャロル・ブーケは、久しぶりでしたよ、懐かしい。
でも相変わらずやっぱり毅然と美しい。
夫とのシーン以外は、ビックリするような老女メイクだったのですが、それさえも、意思の強さを感じさせる毅然とした強さを感じさせました。

父親を失ったことで三人の中に残った傷痕、その傷がさまざまなトラウマとなって、三人の心を苦しめ、また傷ついてゆく・・傷が全て癒えるときはくるのだろうか。
けれども世界は傷痕だけでできているわけじゃない、愛の地獄だけで出来ているわけでもない。ひとつ回すと、そこには光があったり、違う世界も広がっていたりする、万華鏡のように。
ラストで明かされる父親の真実。最初は私その誤解から生まれた結果を悲しむばかりで悔しさばかり先にたったんですよね。いまさら・・って。
でもいまさら・・でも知ったことによって、彼女たちは父親のことを今までと違う風に思い出すことができる、少なくともこれまでのように思い出を封印するようなことはせずに。そこから、また新しく生まれてくるものがあるんじゃないかなあって思いました。

それにしても、冒頭に映るカッコウのシーンには思わずぎゃ・・ってなりましたよ。実は鳥が(特にヒナが・・)大の苦手・・しかし、このシーンは何かを暗示しているのでは・・と思うと速送りなんて出来やしない(汗)横目で・・目の片隅で・・必死に見ていましたが(汗)
巣から落ちたカッコウのヒナを父親(後に登場する3人姉妹の)が巣に戻すシーン・・なんとも意味深でしたね。その優しさが・・誤解と悲しい結末を呼び、(カッコウに壊されるヨシキリの巣のように)自分の巣の中の本当の家族を失ってしまうことになろうとは。
万華鏡のシーンといい、この鳥のシーンといい、いろんなことを想像させてくれるシーンを盛り込んで、忘れられない映画になりそうです。
しっかし・・愛の地獄は・・見ているだけで十分ですね・・(苦笑)こんなに愛と嫉妬と絶望と苦しみを味わったら・・いやいや・・私にはこんなに深い情念はない・・か。


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