瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
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2006年06月12日(月) 「運命を分けたザイル」

2003年イギリス 監督 ケヴィン・マクドナルド
キャスト ブレンダン・マッキー ニコラス・アーロン オリー・ライアル ジョー・シンプソン サイモン・イェーツ  リチャード・ホーキング

実在の登山家ジョー・シンプソンの体験記「Touching the Void」を元に当事者のインタビューを交えながら、再現ドラマで見せる、ドキュメンタリー風な作品です。

アンデス山脈にあるシウラ・グランデ峰登頂に挑んだ二人の登山家。なんとか登頂に成功し、あとは下る・・という時にジョーが片足を骨折する。
彼を助けて下山しようと努力するサイモンだったが、このままでは二人とも助からない・・という事態に陥って・・

ものすごくリアルでした。実際にアンデスなどで撮影したという映像や、当事者のインタビューで、これがそのまま、その時の映像ではないかと思うくらいの。
西壁の雪の襞は怖いくらいに美しくて、夜の雪嵐はマイナス60度を体感させるかのように凍える。
でもそんな情景だけじゃない、その時の、その状況に陥った時の二人の考え、葛藤、思い、そんなものがとても生々しく、響いてくる。
クレバスに落ちたジョーの、登山家とは思えない、悪態、叫び、号泣。
混濁した意識の中での思い。
前に進むのは、助かりたいからじゃなくって、誰かのそばで死にたいから・・と言う彼の言葉。恐ろしいほどの孤独を味わったものだからこそ・・の言葉かもしれない。
自分が無になる・・岩と一体化してまわりの景色に溶け込んでゆく・・
自然の脅威の中に放り出されて、死を迎えるしかない・・という状態に落ちいった時・・って、そんな風に自分の存在が消えて、自然の一部になってゆくんでしょうか。

岩だらけの場所をケンケンで進もうとするシーンは、あまりに痛そうで、見ていられないほどだった・・でも20分、20分頑張ってあそこまで行こう・・と進んでゆくんですね・・・

最後・・かと思われたとき、好きでもない曲が頭の中をず〜っとまわっていて、それがなんとも苦痛だった・・っていうところもすごくリアルだと思ったわ。
顔や指の凍傷の様子も・・・うわ・・・。
そして必死に、お互いの名前を呼ぶ声・・胸にきましたよ。
怖がっていたリチャードが、ジョーの怒りに「やっぱりこれはジョーだ」って納得するシーンには、最後にほっとさせられましたね。

サイモンの決断・・・これはやっぱり、いいようには取られない行為なのでしょうね。後に登山家仲間の糾弾を受けた・・とありますから。
でも、そんな決して人からは誉められないであろう、自らの行動を率直に、飾らずに語っていた彼の潔さ。私には彼を責めることも出来ないですよ・・
自分があんな状況に陥ることはもちろん無いけれど、でも他の状況でもし、自分か他人かの命、どちらかを犠牲にしないといけない・・となると。
これはもう、そのときでないとどうするか・・分からないことじゃないでしょうか。いやいや・・そんな状況は絶対嫌ですけど・・(汗)

それにしても、どうして「山に登るのか」
元山男のだんな様に若い時に一度聞いてみたことがあるのですが・・
「登りたいから」としか言ってくれなかったなぁ(苦笑)
一緒に見れば良かったなぁ。ぜひ、感想を聞きたかった。


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