1995年 ノルウェー 監督:ベント・ハーメル 出演:スヴェレ・ハンセン、ヒエル・ストルモーン
むかしむかし、ある森の奥の一軒家に二人の兄弟が住んでおりました・・・
まるで、そう、童話か、昔話に出てくるような。 ノルウェーの雪の残る、森の中、1軒の家にファーとモーというお爺さん兄弟が住んでいます。 1段づつずれたような不思議な階段を降り、朝になったらラジオを聞き、窓から外を眺め、ご飯を食べては食器を洗い。クロスワードをしたり。 そして次の日もまた階段を降りて、ラジオをつけて・・・ うわぁ・・これはまさに地味映画だわね・・・夜中に見たのでその繰り返しに思わずうとうと・・て、きそうになったのですけど(苦笑)二人、あんまり喋りませんしね。 そして、どこか見たことがあるような、って思ったらあの「キッチンストーリー」のハーメル監督の作品だったのですね。
でもこの二人の兄弟が、とても味があって。 凍った国旗をお湯で溶かそうとしていた弟が、色が落ちてしまって、こっそりと慌てる様子や、クリスマスに飾り付けをする様子や。 ふふ・・と思わず笑ってしまう、微笑ましいシーンもたくさんあるのでした。
そんな二人の静かな日常に一人の男が入ってきます。 離れて暮らしていたファーの息子、コンラッド。スキンヘッドで、時々、奇声を上げて、卵をかえすかのように口の中で暖めている・・見た目かなり不気味な、息子の登場で、兄弟の日常は少しづつ変化を見せてゆくのです。
息子のために作るミルクセーキ。 すっごい大きな房のバナナの黄色が、この地味な映画の中での唯一の鮮やかな色でした。
ラストシーン・・語らない兄弟だけに、これがどういう意味を持つのかは見る人の想像だと思うのだけれど。 以下、ネタバレです。
弟は息子の登場で追い出されたのでしょうか? そうかもしれないけど、私は、モーは、コンラッドの登場で兄と自分との違いを改めて感じたのではないのかなあって思いました。 自分は旅行をしたこともなくって、この閉ざされた一軒家から出たことも無くって。ミルクセーキを作ってやる息子も無くって。 家の外の世界を知らない弟。 最後に飾ってある帆船をじっと見ているシーンがありましたよね。 もう高齢の彼だけど、いつも見ている世界と違うものを見てみたい。そんな彼の気持ちが現れているかのような気がしたのでした。
卵の殻を割って生まれてくる雛のように。旅立つ彼にエールを送りたいな。
見終わってから、じわじわと・・思い出す映画です。 地味映画にお薦めしようかな。
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