瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
この映画の感想読みたい・・って思ってくださる方がいたら、画面下の検索機能からどうぞ。

2003年10月03日(金) 「まぼろし」

2001年フランス 監督 フランソワ・オゾン
キャスト シャーロット・ランプリング ブリュノ・クレメール ジャック・ノロ

結婚して25年になるジャンとマリーにとって、海辺の別荘を訪ねるのが、毎夏のバカンスだった。ところが、その日は浜で眠っていたマリーが目覚めるとそこにはジャンの姿は無く・・・・
突然姿を消した夫・・・理由も分からず、生死も定かでない。
マリーは、夫の死を受け止めることが出来ない。彼女は夫のまぼろしを見、彼に微笑みかけるのだ・・・・

子どものいない二人。海辺へバカンスに行く場面や二人で食事をとる場面でも、どことなく甘い優しいムードがただよっているような気がした。
ところが突然の出来事。
妻はそれをどう受け止めるのか・・・子どもとかいたらまた違う展開のような気がしたのね・・
でも二人はなんだかいまだに恋人どうしのような感じで。妻は夫のことを誰より知っていると思っていたと思う。それなのに・・・自分の知らない一面があって。それは彼女にとって信じられないこと、信じたくないことだったと思う。
揺らいで行く彼女の心・・・
私はマリーは、心の奥底では彼の死を認めようとしていたと思う。でもそれをはっきりとそうだと言ってしまうと・・そこで彼女は全くの一人になってしまう。深い、深い一人きりの闇。
彼女はまだ彼に包まれていると信じたかった、彼の顔を思い浮かべ、彼の手を思い(ベッドの上で横たわる彼女に触れる彼らの手!)、彼に微笑みかける。
自分の周りにはまだジャンが存在している。自分がそう信じている限り。そんな風に感じたんだけど。(これは私の全くの想像ですけど)

シャーロット・ランプリングが凄いの。抑えた深い表情に夫への愛情、不安、そして押しつぶされそうな孤独感が感じられて。
鏡に映る自分の顔、目の下のしわだろうか・・・手を当ててみる彼女になんだかとても親近感を覚えたのだけれど。

義母との会話は強烈だった。母親は息子を一番知っているのは自分だと思い。
妻はそれを認められない。

夏の海から冬のパリ、そして冬の海辺へ。
ラスト、海辺を走ってゆくマリーの姿。これは久々の忘れられないラストシーン。
彼女は彼の死を否定してまぼろしとともに生きて行くのか、それとも全てを受け入れたのか・・・
う〜ん、分からない。分からないから尚憎いラストだなあ。とても印象的で余韻を残して、想像させる。
なんだかとっても深い映画だったな、これは。忘れられない映画になると思う。

そうだね、あと10年くらいしてもう一度観てみたい。またきっと感じるものがあると思う。

お茶のシーンもありました。Tea&Cinemaに入れるかも。


 < 過去  INDEX  未来 >