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2019年10月24日(木) 「APE OUT」のこと

 「けものフレンズ3」と平行して地味に進めている「APE OUT」(Gabe Cuzzillo)の感想を。
 囚われたゴリラの脱走劇を描いた、見下ろし型の2Dアクションゲーム。プレイヤーはゴリラを操作し、その肉体を武器にして脱走を阻む敵を倒しながら自由を目指す。
 操作は移動と殴る、掴むの2種類の行動。敵は銃や爆弾など武器を持った人間達で、殴ることで吹き飛ばし、壁などに叩きつけて倒す。また、掴むことで敵を盾にして進むこともできる。このとき移動速度は低下するものの敵の攻撃を防げると共に敵が手に持った武器を乱射するので、同士討ちを狙うこともできる。
 ゴリラが脱出する状況をレコードのアルバムに見立てて4種類のディスク+αが用意されており、各ディスクとも自動生成される全8面で構成される。敵の攻撃を3発(爆風は1発)受ける前に出口に到達するとクリアとなる。

 操作は移動の他には殴る、掴むの2種類のみであり、パワーアップも無ければ必殺技も無い。ゲーム内容も敵を倒しながら出口に向かうと至極単純明快なもの。まず、この直感的に分かりやすいシステムがゲームに向き合う際に思考の枷を取り外してくれる。
 そして、このゲームの攻略に求められるのは反射神経に基づく瞬時の判断力と即興的な行動という、いわば生存本能ともいえるようなかなり本能的に近い能力である。地形も敵の配置も自動生成される面を進むプレイヤーは、至る場面でこの能力を要求される。その最たるものが敵に対面したときにどう対処するか。攻撃するかやり過ごすか、それとも隠れるか。攻撃に向かう最中に新たに敵が現れたらどうするか。隠れる場所はあるか。敵を掴んで盾にして攻撃をやり過ごすか等々、パターン化が不可能なシステムにおいてはその場面に応じて適確な行動を迷いなく行動しなければ即座に攻撃の餌食となってしまう。その過酷な状況を生き延びるためには常に最善の選択を瞬時に判断して行動することが求められ、その時の緊張感こそがこのゲームの大きな醍醐味であるように思えた。そして、パターン化のような反復学習ではなく反射神経による即興性の高さを要求される内容はビデオゲームの黎明期を彷彿させるものがあり、ビデオゲームの持つ根源的な魅力をこのゲームからは感じられた。
 この緊張感を生み出すのに大いに貢献しているのが先に述べた自動生成の面構成に加えて、敵が攻撃するまでの間である。敵はプレイヤーを発見してから攻撃するまでに一定の時間がある。この間に敵に接近して殴ればぎりぎり間に合う程度の時間であるが、この長さがこれ以上短くてはゲームにならないし、長くてはプレイヤーが優位すぎて緊張感が得られないという絶妙な調整となっている。さらに、この絶妙な間は複数の敵に対面したときに要求する判断をより複雑にし、生き延びるためにプレイヤーは必死で思考を巡らせて最善手を考えることを余儀なくされる。製作者の細心の調整が見出したこの間は、敵と対面したときのプレイヤーの生存本能を大いに刺激してくれるものとなっており、このゲームの中で特に高く評価をしたい点である。

 プレイヤーの野性を強く呼び覚ますような演出もこのゲームの大きな特徴である。その最たるものは、何といっても敵を叩きつけるといった暴力的な表現。壁に叩きつけられた敵は肉片と血飛沫と化し、プレイヤーが操作するゴリラの圧倒的な力の優位性をこれでもかと認識させてくれる。また、掴んだ敵は腕の中でただ武器を振り回して暴れるしかなく、生殺与奪権を握ったプレイヤーはその哀れな姿に滑稽さを覚えることであろう。そして、敵を倒したときにはまるでプレイヤーの勝利を鼓舞してくれるかのようにシンバルが鳴り響き、闘争本能を大いに刺激してくれること間違いなし。さらに畳みかけるように、ゲーム中に鳴り響くトライバルな律動が内から沸き立つ本能的な衝動を解き放ってくれる。
 さらに、荒々しい文字フォントや単色で描かれたキャラクターなど、粗野な演出要素で統一された雰囲気は、まさしく野性の塊。この演出面での高い統一度合いが没入感を高めてプレイヤーと画面内のゴリラを融和させ、ゴリラの力と人間の頭脳を持つ地上最強の生物を生み出すのであった。
 あと、ゴリラが脱出する状況をレコードのアルバムに、各面の題名をアルバムに収録された曲名に見立てているところにセンスの良さを感じた次第。最初、4面クリアしたらSIDE A CLEARと出て意味不明だったのだが、全面クリアしたあとにこういう小粋な演出があることが判明。粗野な中にも知性が光るところが実に心憎い。

 という感じで、このゲームはプレイヤーの原始的で本能的な部分を強く刺激してくれる傑作である。この野蛮で暴力的な雰囲気は規律に守られた現代社会と全く正反対なものであり、ある種の解放感に禁忌的な魅力すら感じられる。
 ただ、反射神経をかなり要求するので難易度は決して低くはない。Steamの実績も、本編クリア以降に用意されている高難易度のモードは達成率が急激に減少しているのがそれを如実に表している。とはいえ、即興性の高さが攻略のし甲斐に直結しており、個人的にはアクションゲーム好きとして十分なほどに楽しめている。特に、アーケードモードは時間制限も加わり即興性がさらに求められて、得られる刺激も格段に高い。現在DISC2までクリアしたが、5分程度の内容なのに30分はプレイしているような濃密な時間を過ごすことができて、非常に満足している。


氷室 万寿 |MAIL
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