| 2005年11月28日(月) |
責任はゼロか100しかないのか |
先々週の土曜日、自分の住んでいるマンションの総会があった。 実はその総会までの2年間、管理組合の理事長を務めていたのである。
管理組合とは何ぞや?といえば、そのマンションの住民を代表する 町内会みたいなもので、理事長はいわば町内会長みたいなものである。 普通は社会的にももっと経験を積んだ人がなるんだろうけど、私の場合 はひょんなきっかけで、33歳(当時)独身の若造がなってしまったわけ ですね。
うちのマンションの場合、100世帯とやや大きいので、管理会社に大体 の事務やら管理業務は任せる形になっている。だから多分、町内会長 よりは仕事は楽である。
でもその分、理事長として意思決定はしなきゃいけない場面も時々 やってくるし、管理会社や外部の会社の担当者とも会わなきゃいけな かったりする。
私の任期の間にも実は様々なことが起こり。 隣地の建替え問題や土地境界確定問題が2件あったり、はたまたうちの マンションの駐車場が外資の手に渡り、仮登記されてあやうく第三者に 売り飛ばされそうになったりとか。
えー、なんでそんな事が?みたいな事も色々と起こり、その度に貴重な 体験を積ませていただいたわけですね。 弁護士のところに法律相談に行ったりもしたし。 まあ、ほとんどの事案については事無きを得て、無事任期を務め上げ られた訳である。
そのおかげでマンション管理の実態とか、管理会社との付き合い方、 考え方なんていうことを知ることができたのは、自分にとっては大きな 財産だと思う。
で、そういう元管理組合の理事長としては、今回の姉歯設計事務所の 耐震構造書の偽造問題は、どうしても住民の立場で考えてしまう。 で考えてみると、本当に出口がないよなあ、と思うのである。
もしも自分が住んでいるマンションにそういう違反が見つかったら、 と考えたら、やっぱり真っ先に販売業者に対して、買取りをお願い したい所だろう。 慰謝料やら、引越しの料金やら、次の住居が決まるまでの費用も重ねて お願いしたい(というか、駄目元でも一応言ってみるかもしれない)が もしもローンを抱えている場合で考えても、少なくとも契約違反の部分 に関しては、その料金はキッチリと返されてしかるべきである。
でもねー、それが返ってこない可能性がすでに見えてしまっていると いうのがやりきれないというか。
今、マスコミでは、どうやら標的をヒューザーの社長に絞ったようで ある。 いわゆる悪人顔だし、色々とうかつな発言のメモが出回ってくるように なったし。 わかりやすい構図を求めるマスメディアにとっては、格好の標的なんだ ろう、と思うのである。
姉歯建築士の方は、あまりに飄々としてて、人々がうまく怒りをぶつけ られないあたりが得をしているのかもしれないし、彼をつるし上げても 自分たちのお金が返ってくるとは思えないあたりも、標的にはなりえて いないような気がする。
でもさ、住民としては、自分の資産の価値を損なわないで返してもらえ る(もしくは、たとえ何割かであっても確実に手にすることができる) 事が重要なんだと思うんだよね。
その意味でいえば、ヒューザーだけが100%の責任を負えばいいのか、 といえばそんな事はないわけで。 今、マスメディアでは誰に責任があるのか、という文脈で責任を追及 している訳だけど、そういう犯人探しに終始する限り、多分100%の 責任を取れる人はどこにもいないし、その犯人探しもいつの間にか うやむやになってしまう事もあるわけで。
もし仮に私がその問題の物件の住民だとしたら、これに関係した 販売会社、建設会社、書類の認可を下したイーホームズにそれぞれ 何割の責任があるのかを下して責任をとってほしいと思うかもしれな い。 多分それが現実的に一番お金が返ってくる条件のような気がするし。
常に責任がゼロか100かで論じられるのは、ちょっとおかしいと思うの である。
ただね、だからといって武部幹事長が言及したように、今のまま犯人 探しを続けていたら、不動産会社、マンション業者ともつぶれる所が 出てきて景気が後退してしまう、という意見には与することはできな い。
というより、村上ファンドにしろ、このマンション建設ラッシュにせよ 結局は、お金が効率的に儲かるところを求めている、今の過熱的状況 から来るんだろうし。
それによって一時的にお金が日本に集まったとしても、こういう信用を 根底から崩すことや、誰も責任を取らない(取りようがない)状況が続く のなら、いずれは日本からお金は流れて出て行ってしまうだろうと思う のである。
もしも建築主が本当に、コストダウンのために構造書に改変をしたの だとして、それで儲けられたほんの些細なお金だって、それが露呈して しまえば、もっと何倍もの大きな代償を支払うことになる訳で。
彼らの会社がそれによって信用を失って仮につぶれてしまうのは自業 自得だとしても、なけなしの金をつぎ込んだこっちまで巻き込まないで ほしい、というのが住民の気持ちだろう。
本当に、どこかでいい落とし所が見つかることを祈っておきます。
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