パラダイムチェンジ

2005年11月04日(金) 葛飾北斎展

芸術の秋だから、という訳でもないのだが、金曜日に上野国立博物館に
葛飾北斎展を見に行ってきた。
上野の博物館・美術館は金曜日の夜だけ、8時までやっている所が多く
仕事帰りにでも行きやすいのである。
ただし、日が暮れた後の上野の森はけっこう真っ暗で、一人で歩くのは
ちょっとこわかったりもするのだが。

ついでながら、芸術の秋といっても、秋の長雨の時には、あまり芸術
って気分にならないのも不思議である。
やっぱり、カラッと晴れて小春日和というか、日がぽかぽかと差して
いる時にならないと、芸術にしても食欲にしても調子が出ないという
か。

葛飾北斎展に関しては、ほぼ日刊イトイ新聞の特集ページが詳しいので
興味のある方はそちらも見ていただくとして。
ざっと簡単に書くと、葛飾北斎の生涯にわたって書かれた浮世絵、肉筆
画など、約500点が揃った展覧会なのである。

葛飾北斎というと、やっぱり「富嶽三十六景」とか「北斎漫画」などの
浮世絵が有名なんだけど、それらの作品は彼が70代の頃に書かれた
作品であるらしく。
北斎は90歳まで生きた人なので、その70代の時期に限らず10代から
死ぬ直前まで、膨大な数の作品を残した人であるらしい。

で、それらの作品が時系列に眺められるのがとても面白いのだが、
それよりも面白い、というか興味深かったのは、彼の画の中にエッチン
グや、遠近法などの西洋美術の影響が現れているという解説を読んだ事
である。

だってさ、その時期って日本はまだ鎖国している時代な訳で(開国は
大体その4〜50年後)。
もちろん、オランダ貿易を通じてそれらの画が日本に入ってきていた
とは思うんだけど、それが単なる町人である葛飾北斎の手にまで行き
渡った、というのがすごいなあ、と思うのだ。

日本の浮世絵が西洋の印象派に影響を与えたのと同様に、日本の浮世絵
師にも影響を西洋美術が影響を与えていたんだなあ、と思うと世界は
狭いんだなあ、というか面白くて。

また、沢山の北斎の浮世絵の本物が見られたのもうれしかったのだが、
個人的にそれより印象に残ったのは、彼の肉筆画の方だった。
こっちの迫力が、なんというか凄いのである。
まるで本当に画面から飛び出してきそう、というと大袈裟だけど。

でも、一枚の単なる平面のキャンパスから、着物の立体感というか、
そういう線や面を書けるのって本当に凄いな、と思うのだ。
なんというか、日本の画って平面的ってイメージがあるじゃないすか。
でも、そんな事はないんだなあ、というのを知って目からウロコが
落ちた感じだったのである。

葛飾北斎展は12月4日まで開かれているそうなので、興味を持った方は
是非どうぞ。
個人的には、ミュージアムショップで売っていた、富嶽三十六景の
複製品(多分同じ版木で、現代の浮世絵師によって新たに印刷された
奴)が、ちょっと欲しくなってしまったり。でも2万くらいするんだよ
ねえ・・・


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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