| 2005年07月31日(日) |
ニシノユキヒコの恋と冒険 |
久しぶりに、川上弘美の小説を手にとって読んでみた。 読んだのは「ニシノユキヒコの恋と冒険」
この本は、ニシノユキヒコ氏の恋の遍歴を綴った連作集である。 といって、これらの作品の主人公、語り手はニシノユキヒコ氏本人 ではない。 彼が恋に落ち、セックスをし、そして別れる結果になった相手の女性 たちが、主人公なのだ。
だからその時々で、その語り口は違っているし、その恋の行方も それぞれ違う。 だけどニシノユキヒコ氏の恋に対する態度は、一貫しているように 見える。
で、誤解を恐れずに書けば、私とニシノユキヒコ氏はちょっと似ている、 と思う。 といって私は、ニシノユキヒコ氏ほど、スマートで女の扱いに慣れてい る訳ではなく、また彼ほど女性に不自由しないわけではない。 だからちょっとうらやましい。
確かにニシノユキヒコ氏の事はうらやましいけれど、だけど同時に ニシノユキヒコ氏の事を、ちょっとかわいそうだな、と思う部分も あって。 そしておそらくは、たぶんそのあたりが私とニシノユキヒコ氏の違い なのだろう。
じゃあ、一体どの辺が具体的に違うのか、って事を述べようと思っても それは言葉にはならない。 川上弘美の作品にはそんな風に、なかなか言葉にしがたい気持ち、心の 奥底に眠る気持ちを刺激するような、そんな作用があると思う。
とりあえずこの作品が文庫化される頃まで、私とニシノユキヒコ氏の 何が違うと思ったのか、気持ちを言葉にするのはお預けしておこうと 思う。
もっともその頃には、すっかり忘れている可能性もあるのだけれど。
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