パラダイムチェンジ

2005年07月13日(水) バットマンビギンズ

今回は映画ネタ。見てきたのは「バットマンビギンズ」
この映画、一言でいうなら「今まで見てきたどのバットマンシリーズ
より格好いい」である。

今回のこの作品、「バットマンビギンズ」と銘をうつだけあり、
新たなシリーズのプロローグというか幕開けを予感させるつくりに
なっている。
そしておそらく、この作品(と今後続くかもしれない新シリーズ)は、
ソニーピクチャーズのスパイダーマンシリーズが大ヒットした事を
意識して作られているんじゃないのかな。

それまでのバットマンシリーズが、一部のマニア受けというか、それ
ともとりあえず大スターを敵役に選んどきゃいいだろうな印象があった
のに対して、今回のこの作品は、1本のヒーローものとして、割と万人
受けする作品に仕上がっていると思うのである。

個人的には初めて、バットマン/ブルースウェインに対して納得できる
というか、感情移入できる性格付けになっているし。

そして私がそう感じる点は大きくわけて二つある。
一つは、今回のバットマンの主眼を、恐怖の克服、という点においた
こと。
幼い時に両親を殺された憎しみ、怒りを単なる復讐に置き換えないこと
そしてそれにつながるコウモリのトラウマを主人公がいかに克服をし、
そして自らがなぜ、コウモリの化身になったのか。

主人公ブルースウェインが、バットマンになる過程の描き方がうまいし
また「敵」の性格付けとの対比によって、正義のヒーローとしての
バットマン像が、より際立って見えると思うのである。

そしてもう一つは、バットマンとしてのアクション。
空を自在に飛び回り、闇夜に隠れて決して姿は現さず、音もなく近づい
て、敵の三下共をなぎ倒していく。
そして姿を現した時には、圧倒的な存在感で相手に恐怖を植え付ける。
初めて「コウモリ男」らしさというか、バットマンの個性が引き立つ
戦いぶりになっていると思うのである。

加えていうならば、その戦い方が懐かしのアニメ「科学忍者隊ガッチャ
マン」をほうふつとさせてくれるあたりも懐かしいというか、ツボなの
である。

バットマンは完全無欠、完全なる善のヒーローではない。
自分が100%善だと思っている人間は、しばしば自分の独善的な正義感
によって、価値観の異なる人間を、完全に叩き潰そうとする。そして
自分が間違っているとは、みじんも考えない。それは例えば、ブッシュ
政権のように。

それに対して今回のバットマンは(あくまで私の印象では)自分の中の悪
邪悪なものの存在を認めているように見える。
それは例えば両親を殺された憎しみであるとか、後悔や恐怖心といった
もので、それらは克服したと思っても、時々表面に顔をのぞかせる。
バットマンも生身の人間なのである。

でもだからこそ、その自分の中の悪の感情とも葛藤を続けながら、
彼は戦っているように見える。
それは、彼が決して人を殺さない点にも現れていると思う。
それはおそらく、彼の美意識が許さないのだろう。


また、映画全体でいっても、NYのように見えてNYではない大都会、
ゴッサムシティを作り上げた美術の力は素晴らしいし、物語のキーと
なるモノレールを、物語の冒頭にうまくはめ込んだ脚本も素晴らしい
出来だと思う。

また、執事役のマイケルケインや、「博士」役のモーガンフリーマンの
「何でもお見通し」な感じのある掛け合いや、心底楽しんでいそうな
余裕のある演技も素晴らしいし。

そして今回メインの敵役であるリーアムニーソンだけでなく、サイコな
精神科医のキャラも立っていたし、ケン・ワタナベも、「Gotham」のthの
発音がとてもクリアできれいだった。
多分今現在、西洋的でなく威圧感のある、あの役の存在感を出すために
は、「ラストサムライ」の、あの渡辺謙が一番しっくりとくると思って
キャスティングされたんだろうし。
ヒロイン役のケイティホームズも、決して華のある方ではないけれど、
気丈な検事役にはまっていたと思うし。

いやあ、とにかく一本のヒーローもの映画として、近年まれに見る
爽快感のある映画というか。これだったらまた見たいかも。
おかわりしても茶碗3杯はいける感じの映画でございました。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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