掛川奮闘記

2006年07月29日(土) 060729_景観の勉強会

 北海道の夏らしい爽やかな一日です。自転車で出かけるには最高の一日です。

【景観法の勉強会】
 午後に、景観を勉強している仲間内で「美しい地域・景観作りセミナー」と称して、景観法を活用する美しい地域作りについて勉強をしました。

 内容は基調講演とパネルディスカッションの二部構成で、基調講演には国土交通省で課長補佐時代に景観法の法律作りを担当したMさんにお願いしました。

 Mさんは最近まで北海道にいたのですが、今は春の転勤で関東に戻られています。法律を作ったのも2年ほど前の事ですが、それを思い出してもらって法律制定までの過程やその思いなどを伺おうということにしたものです。

 法律は短いほど重要という何とはないステータスみたいなものがあって、本当に根幹的な法律は憲法、刑法など二文字の法律で、次に重要なものが道路法、河川法など三文字だと言われています。

 ですから「○○に関する特別措置法」などという長たらしい法律はそれだけであまり根幹的なものではないな、と思われがちなものです。

 今回の景観法は国土交通省でも50年ぶりとなる三文字法ということで、本省としても力が入った様子が良くうかがえました。

 そもそも景観法の背景は、当時既に全国で500以上の自治体で景観の事が行政上重要だと考えて景観条例を作っていながら、国民共通の基本理念が確立されておらず、自主条例というソフトな手法による景観保全の限界が感じられていた事が挙げられます。

 そこで国として景観を正面から見据えた基本的な法律を整備して、景観を整備・保全するための基本理念の明確化や、国民・事業者・行政の責務を明確化すること、景観を形成するための行為規制を行う仕組みや支援措置の創設などを打ち出して、地方公共団体に一定の強制力を持たせるということにしたものです。


 実は景観法の成立過程では、農水省や環境省などの他省庁との喧嘩や摩擦を避けるために、最初は都市計画区域といういわゆる国土交通省が主に所管するエリアだけで適用される法律にして済ませようとしたようです。

 ところがその段階で農水省側も、棚田などの農業景観、農村景観の崩壊に心を痛めていたため、効率化だけの農業から景観面での農業についても一定の見解を出しておく事が重要だという判断をして、早い段階から国土交通省と農水省による共管の法律として打ち出すという方針が固まったのだそうです。

 この段階では自然公園はやはり環境省に任せておけばよいだろう、ということだったのですが、最後の最後になって自然公園でも景観を根拠とした行為規制などが必要だということで「適用対象に入れて欲しい」という申し入れがあったのだそうです。

「もう本文もある程度書き上がった段階で申し入れをされたので再度全体の整合を取るのが大変でした」と講師のMさんは苦笑いをされていました。

 しかしこうすることで、都市と農村、林地、さらには自然公園までもがこの法律の適用を受けるという形になり、国家的な景観の理念というものに相応しい法律になったと言えるでしょう。関係者の努力が実ったわけです。

 さて、今回の法律ではその中身を議論したときにも最初の頃は様々な意見があったそうです。まずこの景観法でも「美しい法律とはなにか」という定義はされていません。このことは美しい法律というものは地域が判断すべきものとされているわけで、自治体など景観行政団体と呼ばれる機関とさらには住民の意識が重要になると言うわけです。

 また「国家的な景観というものはないのか」というような議論もあったようで、富士山などが該当するのでは、ということでしたがこれも法律としては潰れました。

 さらには理念として「地域を愛する心の醸成」なども盛り込んでは、という意見もあったのだそうですが、内心の自由との整合が取れないだろうという事でこれも反映はされませんでした。

 今話題となっている教育基本法の行く末が注目されますが、内心の自由と規範となるべき行為との区別をどう取るかも課題ですね。

 さて、景観法施行後の平成17年にこの法律の認知度などに関する調査を行ったそうなのですが、知っていると答えた自治体が67%、関心があると答えたところが78%だったものの、景観行政団体になる意向があると答えた自治体は25%にとどまりました。まだ景観法を使って解決すべき課題がない、と考えている自治体が多いのも事実です。 

 あまり景観に固執すると、いろいろな経済行為に対する制限的な力として働く事から、当然そのバランスを地域の中で考える事が必要で、それこそが地域の民主主義の力が試されるというものです。もはや市民が意見を言わずにまちづくりなどできないのだ、と考える事が重要です。

    *   *   *   * 

 セミナーが終わった後の懇親会では「良好な景観の保全や創出というのは薬でいうと漢方薬のようなもので、じわじわと長い時間をかけて効果が現れるのだと思います。一方経済効果は短期のうちに発現しないと投資を回収出来なかったり、地域の経済が廃れてしまってからではもう遅いという事もあり得ます。このバランスが問題ですね」という意見が出ました。

 まさにそのとおりで、短期には答えのでない問題であるが故に、現代の我々は子孫に何を残せるのかということに真剣な議論をしなくてはならないのでしょう。

 景観法という力を上手に使って、経済と真に豊かな地域社会を実現することが地方自治体の力として求められているのです。



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