| Spilt Pieces |
| 2003年12月21日(日) 朝 |
| 久々に、徹夜ではない朝の迎え方をした。 ひどい寝不足だったのもあって、前日の午後1時から延々睡眠をとっていた。 朝6時、まだ陽が昇り始めたばかりの時間に目が覚める。 我ながらよくこんなに眠れるものだと半ば呆れつつ、しかしこれを機会にそろそろ夜型解消を努力した方がいいのではないかと思った。 心理的な圧迫のない状態が、こんなにも心地よくて、少し間の抜けた感じがするものだとは。 最近ずっと、日の出を見ていた。 インターネットの接続を切って、昼も夜もないような生活を送っていて、それでも、太陽が昇ると何だか新しい一日が始まるのだと思えて嬉しかった。 家の前の畑に霜が下り、一面真っ白。 耳が冷えて少し痛くなる。 進路のことも、抱えている問題も、全部忘れて東の方を見ていた。 苦しかった課題も終わり、気がつけば卒業することに対する感慨ばかりが押し寄せてくる。 自分はこの4年間で、何をしてきたのだろう。 何を求めてきたのだろう。 ガムシャラに過ごしてきた時間が終わると、急に夢から醒めたみたいになる。 起きて迎えた朝は、自分がこの世界の一員だったということを思い出させ、当たり前のように高く遠いところからこの顔を照らすのだ。 眠りすぎた。 太陽が完全に昇るまで寝直そうと思ったものの、頭がはっきりしすぎている。 冬の朝。 空気が、肌を刺すようにキリキリと鳴く。 布団をはねのけ服を着替え、髪を梳かして顔を洗う。 思わず外へ行きたくなった。 雨戸を開け、新聞を読み、朝食をとって。 ジャージとスニーカー、軍手に帽子。 少しずつ体力を戻していかなくてはと思いつつ、すぐに痛くなる横っ腹を押さえながらポテポテと朝の町を行く。 犬の散歩をしているおじさんが遠くに見えた。 追いつかなかった。 車とばかりすれ違い、結局他の散歩人とは出会わない。 ストレッチをしながら、新聞に入っていた求人広告を広げた。 増え続けるフリーターを、父は嘆く。 この国はどうなってしまうんだろうと言って、悲しそうに。 私は、父を裏切っている。 将来どうするつもりかと聞かれて、いつも考えていないと返す。 来年就職しないと言い切るようになった私を、友人たちは半ば本気で、しかし自分の安定した空間をきちんと維持した上で、「そういう道もあるよ」と言う、羨ましそうに。 不安など、見せたくなかった。 背筋を伸ばし、あっけらかんと笑っていたかった。 「バイト、しなくちゃ」 何となくよさそうに思える広告を円で囲んでいく。 テレビを見ていても何も頭に入らない。 だけど時間を浪費している気もしない。 午前9時。 朝は、まだ始まったばかりなのだと。 部屋に戻り、履歴書を手に取った。 志望動機が書けない。 起きてきた母が台所で働いている音がする。 「あなたもご飯食べる?」 数時間前食べたことを忘れたフリして、味噌汁をすすった。 納豆と、漬物と、小さく切って炒めたお歳暮のブロックハム。 朝だ、と思った。 今までにだって何度も、数え切れないほど、朝を迎えているはずなのに。 私の周りの友人たちは、多くが大学院へ進学する。 時折、私と同じように、不安定な進路を選ぶ人がいる。 「損得勘定なしに付き合えるのは、学生の頃の友人まで」 以前叔母に言われた。 だから大事にしなさい、って。 私は、綺麗事かもしれないけれど、これからもずっと、相手を人間だけで見られたいいのにと思った。 だから曖昧な返事をした。 大企業に行く人も、博士課程に進む人も、役者を目指す人も、教採浪人する人も、違うのは、ほんの小さなことだと思うのに。 それが変わっていくのは、見る目を失っていく証拠なんだろうか。 それとも、臆病になってしまうからなんだろうか。 朝は、明るくて眩しい。 時折その強烈な光に目が眩み、だから夜を求めてしまう。 でもきっと、何かを始めるのに遅いことはない。 「そういう道もあるよ」 そう言った友人たちの言葉を素直に受け取れるようになるまでに、私はいくつの朝を必要とするのだろうか。 久々に、頭の冴えた朝。 とりあえず遊ぶぞなどと豪語しながら、本当は、逃げ道を失ったこれから先のこと、考えない日などもうないわけで。 父に、悲しそうな顔をさせている。 真っ直ぐな道を選ぶことはもうできないけれど。 私、自分の道だけは失わない。 そういう誓いは、アリ、なのかな。 |
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