Spilt Pieces
2003年11月11日(火)  眠る
日が暮れるまで、雨が降っていることに気がつかなかった。
微妙な腹痛とけだるい眠気に負けて一日を過ごす。
眠いと言ってはベッドに潜り、時間の流れすら忘れて惰眠を貪り。
なんと贅沢な時間の過ごし方だろう。
学生の特権だと、誰かは笑うんだろうか。


夕食のカレーライスにとろけるチーズを入れてみた。
ロイズのチョコレートや雪見だいふく、ベリーのヨーグルト。
好きなものばかりもそもそと食べて、太るわよと母が言う。
お気に入りのぬいぐるみを抱きしめてまた眠ってしまおう。
世間の喧騒を忘れ、こんな風に緩やかな時間を得て。
自分に何ができるのかを未だに探している。
静かすぎる一日。


温度のない水の上で漂うように、身体が沈み込んでいく感覚。
重たくなってくる瞼は、早くも夢の第一部を上映しようとする。
近頃あまり非日常的ではない、日常外の世界。
境界線が少しずつ霞み、ぼやけた視界が周りを掴みきれなくなる。
髪も服も景色も、電気がついていたことさえ忘れていた。
吸い込まれていくのは、意識だったろうか、身体だったろうか。
降り注いだのは、雨でもなく太陽でもなかった。


心を寄せて歌う場所。
暖かい、一瞬の幻。
過去に感じた微かな重みを反芻し、手を伸ばす。
何にも、触れられなかった。
だから先へ進もうと思った。
何度目の決心だったろう。


見えもしない現実を、求め続けていいと思えるほどには愚かになれなかった。
眠る、眠る、眠る。
時にはこんな時間があってもいいのだと。
ふと、時間も世界も全てを忘れてしまいたくなる。
だけどそうすることを望んでいないと知っている。
だって、そうでなければ、眠りを必要とするはずもなかっただろうから。
泣きたくなることだって、なかっただろうから。


ぬるい雨に打たれているようだ、と思った。
ズブリズブリと手足を奪われ、潜っていく。
意識を失う瞬間を、未だに知らない。


小さなベッドに潜り込み、昼も夜も忘れて眠る。
どんな生き方でもいいのだと、かつて誰かに言った言葉が今さらになって戻ってくる。
私は何を望んでいるのだろう。
ただひたすらに自由な夢の中、何故だか寡黙な自分がそこにいた。
筋のない道を行くことを、いつの間にか覚悟している表情だった。
そのために今は眠っていようと、いつものように、言い訳を片手に抱きしめて。


おやすみなさい。
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