| Spilt Pieces |
| 2003年08月02日(土) 夏夜 |
| カチカチと、電気を消す。 カーテンの隙間から漏れる光は 家の前にある小さな街灯だ。 MDコンポの電源を入れた。 静かな青い光源は、 音を奏でながら時折眠る。 ああきっと 単に音が小さいだけかもしれない。 例年になく遅い梅雨明け。 久し振りの、寝苦しい夜。 水の感覚を身体に呼び起こす、 私の好きな音。 タイマーをセットした扇風機。 2つの赤い蛍が 風の元で揺れる。 汗をかく。 肌に張り付くシーツの色が 音だろうか風だろうか、 何かに溶けて 布としての感触を失った。 心の中で並べた言葉は 朝になったら忘れてしまう。 だから 私が綴る言葉は いつだって回想録。 水のような、と言ったら 語弊があるのかもしれない。 浮かんでいられるほど優しくはなく 気温だけは夏を示しているのだ。 氷のような、と言ったなら 肌の表面くらい騙せるだろうか。 涼しいとも限らない、 時に痛みを覚える氷の感覚。 水の底では漂えない、 ただ、 てのひらで散っていく 花びらのような空間だった。 ようやく迎えた夏の夜。 私以外の誰を騙すこともなく、 暑さを誤魔化しながら 月を眺めた。 街灯が少しだけ邪魔だった。 月が翳る。 居場所がないかのようなその表情。 ああそうか さっき見た花火の隣で 月は やはりそんな顔をしていた。 昔、 太陽を眺めた。 直接見ることができないで 氷を透かして見上げていた。 ポタポタと欠けてゆく雫 受け止めながら 「冷たい」 小さく叫んだ。 形を失いながら氷は 益々透きとおっていった。 全身に染み渡るような 微かな色づき方だった。 音が心を抱いている。 風が身体を抱いている。 私は なすすべもなく。 カーテンが揺れた。 本物の風だった。 |
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