Spilt Pieces
2003年07月29日(火)  時折
人込みの中。
時折感じる、危ういバランス。
均衡はどこだろう。
小さな溜息一つで
飛び散ってしまいそうな空間。


言葉を捨てることはできない。
だけど時折、無意味だと思う。
些細な言葉の定義など。
仮に私が知っていても
相手が知らなければ何の意味もない。
誰の中にどんな法律があるというのだ。


道を譲る車。
窓から出た腕にはタバコの煙。
すれ違いざま、顔を見る。
サングラスをかけた、怖そうな人。
ふと、目が合った。
真っ直ぐな目、
後ろめたいことなど何もないのに
思わず逸らしてしまった視線。


何となく開いた恋愛小説。
誰の顔を思い浮かべればいい。
もしも優しさを与えられたなら
私はきっと弱くなる。
張りつめた糸が弾けるように。
揺れる電車の中で
誰がどこにいるのか分からない。


時折、誰かの傍にいたくなる。
だけどホントは、
一人でいることが好きかもしれない。
誰のためでもない自分を
誰のためでもない空間で
ただ知るんだから。
大人のフリも
子どものフリも
全ての仮面を脱ぎ捨てて。


何もかもを
消してしまうほど勇気はなかった。
知らない街で知らない人と話をする。
だから自分が帰る場所を知る。
きっと、
雑踏の中でこそ
一人であることを自覚するかのように。


細く白い指など
持ってない。
長くて綺麗な足などない。
そこにあるのはただ
私の指と、私の足。
小説のようには生きられない。
だからこそ
大切なのかもしれないと思う。


大きな部活鞄を抱えた中学生が
座席に腰かけながら人生を語ってた。
言葉が耳に入るままでもよかったけれど
何となく
ヘッドホンのボリュームを上げた。
否定する気も肯定する気もなく
ただ、
中学生の頃の自分を思い出した。
あくまでも、何となく。
ボリュームを上げていた。


母と二人、駅近くの公園。
ビニール袋片手に
クレソンの葉を摘んだ。
時折虫が手について
その度私は大きな声を上げた。
隣で母が笑う。
虫のいないところを取りなさい。


時折
水に沈む渡し道。
恐る恐る
次の一歩を踏み出す。
そろそろ行くよと
母が呼ぶ。
すれ違う、二人、高校生。
彼らは無邪気な様子で遊び始めた。
人生なんか語っていなかった。
だけどこれが真実かもしれない、
そんなことを思った。


時折、
言葉は重ねれば重ねるほどに
意味を失ってしまう。
だけど無性に留めたくなることがあり。
それは私の悪癖なのだ。
何も語らない、何も言わない。
そんな自分は自分じゃないけど。


何も語らない、何も言わない。
どんな美しい言葉より
どんな立派な言葉より
どんなもっともらしい言葉より
ただ
時折
沈黙だけが発することのできる言葉を。
求めているのかもしれない。
求めていないのかもしれない。


「言葉を綴ることには何がある?」
そう聞かれて
「空虚な自己満足」
と答えそうな私は
やはりひねくれ者なんだろうか。
だって
そう言いながら
今もキーを叩いているのはこの腕。




街を歩く。
街は何も語らないけれど。
時折
やたら
饒舌だ。
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