Spilt Pieces
2003年06月24日(火)  雨と傘
雨、中途半端。
私、中途半端。


雨が降っていた。
傘を差す私の前を、見知らぬ女の人が歩いている。
雨を予想していなかったのだろうか。
ずぶ濡れで、ゆっくりと歩く。
今日はそういう人を多く見かけた。
だから、彼女は珍しいわけじゃない。


だけど追い越そうとしたとき、何だか自分がひどく冷たい人間に思えた。
衝動的に、傘を向けた。
「途中まででよければ」
当然のように、彼女はびっくりした顔でこちらを見た。
その後満面の笑みを浮かべて、「ありがとうございます」と言った。
雨のキャンパス、誰が濡れて歩いていても不思議ではない状況。
それなのにどうして、そんなおせっかいをしてしまったのか自分でも分からない。
ただ何となく、そのときの笑顔で自分のしたことは悪くはなかったのだと思った。
「勝手な、自己満足」
そういう声が、自分の中から湧き上がってこないわけでもなかったけれど。


きっと、彼女は人見知りしない性質なのだろう。
突然声をかけたいわゆる不審者の私に、色々尋ねてきた。
「どこに所属しているんですか?」
「何年生ですか?」
私は、自分がした行為がやや照れくさかったのもあって、笑って言葉を濁した。
雨の日の出来事は、そのまま雨に流してしまっていいのだと思う。
「見ず知らずなのに、嬉しいです」
彼女の目はとても真っ直ぐで、純粋な人なのだなと思った。


些細な自己満足かもしれなくても、何かが返ってくる場合もあるのだと知った。
それを期待してやったことではないけれど、他人に無関心に思える世の中だからといって、それが必ずしも、必要ではないという意味には繋がらない。
嫌で仕方なかった雨が、心地よい雨に変わる。


結局、自転車置き場までの短い距離だった。
私は車で通学しているのだから、そのまま傘を貸せばよかったと後で思った。
ただ、一瞬話しただけでも分かるような人のよさ。
貸したら彼女には負担になるに違いない。
そう思って、やめた。
そのときの判断がどうだったのかなんて分からないけれど。
中途半端な自分の行為を、温かく受け止めてくれる人もいる。


降ったり止んだり、梅雨真っ最中。
今日も雨は中途半端。
悩んで結局傘を渡せなかった自分、中途半端。
だけどどうしてか、いつものように痛みを伴わない。
きっと、いい出会いをしたからだろう。
彼女の名前は知らない。
どこかでもう一度会っても、私は覚えていない。
一期一会。
ほんの一瞬だけの関係でも、それが優しいものだったら。
たかがそれだけのことで、どうしてか胸の中がホカホカする。


誰かと出会う、別れる。
それは毎日の出来事で、日常茶飯事。
その時間の流れの速さに、時折涙もするけれど。
悲しい思い出が増えぬよう、優しい思い出が増えるよう。
損得なしに笑える、そんな時間が日々を埋めれば幸せ。
温かい時間をありがとう。
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