Spilt Pieces
2003年05月31日(土)  実習日記:9
実習日記、5や8といった間の記録はつけていない。
でも、後で思い出し日記の形で書くかもしれないので数字は9。
要するに、題名の数字は「実習何日目」という意味で。


今日は文化祭。
前日委員会の作業を見ていて帰宅が午後11時頃だったので、起きるのが辛かった。
5時半に起きようと思っていたのに、体が動かなくて結局6時。
実習中は、妙に規則正しい生活を送っている気がする。
少し睡眠が足りないのが痛いところ。


7時にクラスの集合場所へ行くと、何人かの生徒が既に来ていた。
企画の準備をすると言って早く集まったはずなのに、なぜか遊んでしまっている。
自分もよく脱線するから気持ちはよく分かる。
「教師」の立場としてはこれじゃいけないのかもしれないが、だからといってきつく指示を出すのも嫌だ。
談笑しながらも手を動かし始めると、いつの間にか生徒も参加するようになった。
大声を上げなくても、伝えたいことは自分の体で示せばいいのかもしれないと思った。
そういえば掃除も、私が箒を持って教室を掃き始めると生徒もモップなどを探して片付けをするようになった。
それまで、いくら口で言っても駄目だった。
生徒は、自分が考えている以上に周りを見ているのだと知った。
そしてその分、言葉を伝えたいときには大声ではなくて行動が求められているのだとも。
何だか、とても興味深い。


今日は生憎の台風。
外でやる予定だったが、体育館へと変更。
場所は、電気もつかない奥のエリア。
しかもだだっ広い空間を与えられて、どうしても間延びしてしまいそうだった。
生徒と一緒に、どうすればその場が明るく見えるか頭を捻らせる。
風船を膨らませて、壁にセロハンテープでつけていく。
バスケットゴールを縮めて、看板などをつけて装飾する。
エンジンさえかかれば、生徒は自分でどんどん動き始める。
「面倒」と言っているうちは、やる気がないというよりもむしろ、どうしたらいいのか分からないだけなのかもしれない。
前日決めたシフトでは、できるだけ楽な予定を組もうとしていた生徒たち。
今日は、自分のシフト外であってもクラスに顔を出す生徒が多かった。
初めての文化祭、シフト外で遊びたいかもしれないのに、大雨の中クラスのために買い出しを引き受けてくれる生徒もいた。


正直、最初は口をきいてくれない生徒も多かった。
特に男子は、私がどんな人間なのか見定めようとしている風でもあった。
そのせいか、見られるのが怖かった。
照れているのだろうとは思いながら、返事が返ってこないのが悲しくて、声をかけるのさえ躊躇いそうになった。
でも一週間を経て、少しずつ変わってきた。
警戒心の塊のような表情でこちらを見ていた生徒が、笑ってくれる。
話題を振ると、自分の話もしてくれる。
最初、「馴れ馴れしく声をかけるな」という雰囲気だった。
それがいつの間にか、変な顔をしたり冗談を言ったり。
家族の話、勉強の話、中学の頃の話、そして私にも色々質問してくれた。
高校生は、小学生や中学生よりも大人で、実習生というだけで無条件に慕ってくれるわけでもない。
表面的には笑っていても、あくまでも愛想なのだと最初の頃先生に言われた。
その意味が分かった一週間、その終わり頃になって、少しずつ打ち解けてくれるようになってきた。
笑ったときの顔が、こんなにも違うのだと知って驚く。
すごく嬉しい。


「先生、食べる?」
女子が、並んで買ってきたたこ焼きをくれた。
「おいしいでしょ?」
口の中のたこ焼きが熱くて、返事ができなかった。
1階を歩いていたら、部活の生徒が4階から大声で呼んでくれた。
恥ずかしかったけれど、雨の中窓を開けて手を振ってくれたことを思うと、嬉しかった。
普段の生活では苦手だと思うような子とも、話をしてみると意外に合ったりする。
生徒の友人関係や恋愛、教師や学校に対する考え方など、見ていると随分と多くのことが分かる。
「教える」実習に来ているはずなのに、教わってばかりだ。
その上、嬉しいことばかりで少し怖くなってくる。
最初は3週間に延びた実習が憂鬱で仕方がなかったのに、あと2週間も生徒たちと一緒にいられると思うと今はその変更がありがたい。


クラス担任の先生が出張でいなかったので、点呼や注意事項の連絡、金銭管理など、担任業務を色々と経験した。
その上、何十年ぶりかの台風上陸。
大変なことばかりで、結局ほとんどクラスに付きっきりだった。
他の実習生が色んなクラスの出し物を見て回ったと言っていて、羨ましくもあった。
でも、たくさんの経験をさせてもらっている自分の方が幸運なのだなと思う。
たかだか実習生なのに、クラスを1つ任せてもらえるだなんて、責任は感じるけれどもやはりおもしろい。
文化祭を回ることなど、実習が終わってからいくらだってできる。


文化祭期間中、何時にどこへ集合と言ってもなかなか集まらない。
1人1人の所在を確かめながら話をする。
隣でマイクを使っていたので、大声を出さないと届かなくて、結局話が終わる頃には声が枯れた。
静かに話を聞いてくれるタイプの子ばかりではないけれど、返事がどこかから返ってくる。
できることは少ないし、失敗も多い。
生徒と教師の境が分からなくもなる。
一緒に騒いでばかりはいられないし、3週間経ったら何事もなかったかのようにこの空間からいなくなるのだと思うと、何だかせつない。
でも、自分にできることだけでも、精一杯できたらいいなと思う。


数年ぶりに偶然同級生に会った。
「笑った顔も雰囲気も、全然変わらないな」と、少しクサイことを言われた。
確かにそうかもしれない。
でも、精神的にはあの頃より、色んな経験を経て少しは変わったんだよと言いたかったような気がする。
それにそれは、現在進行形。
毎日が発見だらけで、とても充実している。
実習に来てよかった。
あと2週間、頑張ろう。
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