2010年03月01日(月)  意地とラーメンとプライドとスプーンと。
 
仕事帰りにコンビニに寄って、カップラーメン、おにぎり、スナック菓子、ビール、ミネラルウォーターをカゴに入れ、高校生か大学生くらいの若い女性がレジで清算を始めた。黒髪で質素な感じのその女性は、コンビニのレジには似つかわしくないお嬢様っぽさを醸し出していた。
 
「お、お箸とスプーンはおつけしま、致しますか?」
 
コンビニで尋ねられる定型句も何となくたどたどしい。おそらくまだバイト慣れしていないのであろう。お箸とスプーンね。つけてもらおうかな。ん?
 
「ん? え? えっと、何かスプーン使うものありましたっけ」
 
カップラーメン、おにぎり、スナック菓子、ビール、ミネラルウォーター。スプーンを使うものは何もない。
 
「え? あ、はい」
 
一瞬にして顔が真っ赤になる女性。間違いは誰にだってある。仕事に慣れていなければ尚更だ。ミスを咀嚼し吸収してこそ人は成長する。しかし彼女は違った。
 
「……ラーメンです」
「え?」
「ラーメンです」
 
顔を真っ赤にしながら、自らの失言を撤回せず、ラーメンにスプーンを使うという新常識を、さもラーメンにスプーンをつけることがコンビニ業界の総意であるといわんばかりにギリギリの冷静な口調で主張し始めたのだ。しかしまだ僕が間違えている可能性だってある。彼女が言っているスプーンとは、カップラーメンで使用するレンゲという可能性だってあるのだ。
 
しかし、彼女が隠すようにレジ袋の奥に入れたスプーンは、アイスクリームを食べるときに使用するスプーンであった。
 
この種類の意地とプライドは、現代社会でもはや絶滅しかけている。抵抗を試みる意気は、既に中間管理職というキャラクタに染まりきってしまった僕には残されていない。是非彼女にはこの調子のままで大人になっていってもらいたい。
 

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