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| 2010年02月04日(木) 読んじゃダメだ。俺は止めた。 |
| 先日、御ハナを連れて近所の小さな動物園に行った。そこには小動物の他、昆虫コーナーがあって、ホタルやバッタ、カマキリなどがガラスケースに入れられているという都会的残念さが滲み出ている場所で、その中にアリが入っているガラスケースがあった。 よく見る土が半分くらいまで入っていて巣の中の構造を見ることができるものである。そのケースでは巣の中は見ることができなかった。というか結構大きめのケースなのに一匹のアリがせわしなく動いているだけである。そのアリのガラスケースに手書きPOPが貼られており、土の場所を示した矢印のあとにこのように書かれてあった。 「この茶色い丸いものは何だと思いますか? これはアリさんが運んだゴミなのです。アリさんはキレイ好きなので、ゴミも決まったところに集めるんです」 ほうほう。一匹のアリは動き続けている。茶色い丸いものはゴミなのか。と、矢印が示す土を見ても茶色いものは見当たらない。なんだか黒くて丸いものはいっぱいある。一匹のアリはガラスの壁をよじ登っている。これがゴミなのかと、ガラスケースに顔を近付けて黒くて丸いものを凝視してみると、 全て死んだアリの頭であった。 ウギャーと叫べるものなら叫びたかった。叫ぶというのは、心に傷がつく前に気力で弾くようなものであって、あの静かな場所では叫ぶわけにもいかず、小刻みに連発するしゃっくりのように息を吸ってしまい、ということはそのショックをも小刻みに吸い込んでしまい、私はひどく傷付いた。 手書きPOPの楽観的な文面が、凄惨さをより際立てて、読み返してみると無実の人間を地獄に落とす悪魔が書いたのではないかとすら思えてくる。 キレイ好きの一匹のアリは、何を思いながら仲間の頭をひとつの場所に集めたのだろう。そして今、何を思いながらガラスケースの中を這いずりまわっているのだろう。 俺の屍を拾うのは、誰だ。 |
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