2006年05月28日(日)  小さな愛。
 
日曜日。休日。朝8時。「ちょっと行ってくる」とベッドに妻を残し池袋。不思議な不思議な池袋。東は西武で西東武。高くそびえるサンシャイン。ビックビックビック、ビックカメラに開店前から並ぶ僕。なぜなら日立のビデオカメラが39800円で売り出される日だから。
 
雨が降っている。休日の朝の池袋はまだ人もまばらだ。妻のお腹には赤ちゃんがいる。今年の秋にこの世にひょっこり顔を出す。その姿を、その笑顔を、その成長を、僕は記録に残したい。だから休日池袋。僕は静かに開店を待つ。
 
僕の他にも開店を待つ人がいる。日立のDVDカム39800円。限定10個。10人しか手に入らない。でも僕の前には10人以上並んでいる、ような気がする。
 
なぜちゃんと数えないのかというと、真実を知るのが怖いから。それに僕は生まれ来る赤ん坊の姿を、笑顔を、成長を記録に残したいという純粋な動機によって休日の朝7時半に起床して池袋までやって来てるから。この努力、報われぬはずがないから。それに例え僕の前に10人以上並んでいたとしても、その10人全員が日立のDVDカム39800円を購入するとは限らないから。衝動的に単3電池が欲しくなった人がいるかもしれないから。コピー用紙が欲しくなった人がいるかもしれないから。
 
「それでは整理券をお配りいたしまーす」
 
開店30分前に整理券を持った店員が現れる。皆一同に浮き足立つ。でも僕はすごく落ち着いている。なぜならそれは純粋な動機だから。ベッドに妻を残し、休日の朝に気力を振り絞り、雨の池袋にただ愛情だけを抱いてやってきたからという甘い考えによって僕の二人前で整理券は消えた。シャッターが開くビックカメラの前に、小さな愛だけが残った。
 

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