2006年05月26日(金)  フランス旅行。
 
僕は今夜もベッドに横になる妻のお腹の中の赤ちゃんに話し続ける。
 
「えとね、今日ね……くすっ。そうなんだよ。そいでさー、まぁ気になってはいたんだけどさー、そうそうそれ」と、時々妻の顔を覗き見ながら、赤ちゃんとコソコソ内緒話するように話すと、「ちょっとそれマジでムカつくからやめて」と、妻がお腹の中の赤ちゃんと僕を引き離そうとする。僕は引き離される刹那、「じゃあ続きは明日ね」と言ってお腹をポンポンと叩く。
 
「もー。何話してたのよー。何笑ってたのよー」と、妻は仲間外れにされた子供のように口を尖らせる。その口にキスをしようとすると、「いやん。タバコ臭い」と言って背を向ける。僕は妻の背中を抱きしめて、「聞きたい?」と耳元で呟くと、「聞きたくない。もういや、あっち行って」と、妻は背を向けたままいじけてしまう。「それじゃあお世話になりました」と、僕がベッドから立ち上がると、「どこ行くの?」と、ようやく僕を見て、「トイレに行ってくる」と言うと、「早く帰ってきてね」と言う。
 
トイレで本を読む癖が結婚してからも抜けきれない僕は、排泄のついでに聖書を読むという罰当たりな行為を10分ほど続け、ベッドに戻ると妻はもう寝ている。僕がベッドの端に座ると、驚いたような表情で目を覚まし、「あぁ……夢見てた」と言う。目を閉じて10分で夢を見ることができるのは妻の得意技である。
 
「何の夢見てたの?」と訊ねると、「うーん……」とお腹を撫でながら、「フランスに行ってた」と、自分自身、どうしてフランスなんて行っちゃったんだろうというような表情で答える。「フランスで何してたの?」と訊ねると、「目が覚めてからあなたと結婚してたこと思い出した」と、見当違いな返答をする。
 
「夢の中ではまだ独身だったりするよね」僕が笑いながらベッドに入ると、「夢の中でも結婚してた時が、本当に結ばれた時なのよ」と妻が言った。「そうなの?」「そうなのよ」妻が言った。「どうして?」「どうしてかしら」妻が言った。「じゃあ頑張ろ」「頑張ってね」お腹の中の赤ん坊が言った。「今何話してたの」「なんでもないよ」僕は笑った。
 

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