2003年01月09日(木)  ママよママなのよ。
母と同じ歳くらいの看護婦さんが最近携帯電話を買った。
僕と同じ歳くらいの娘とメール交換をしたいらしい。
娘からメールが来るたびにウキウキして仕事中にも関わらず僕の元へ携帯を持ってくる。
 
「メール見せて」
 
看護婦さんは自分の携帯に届いたメールを開く事ができない。
だから僕が看護婦さんの携帯に届いたメールを開く。
 
「メール読んで」
 
看護婦さんは小さい字を読めない。
本当は読めるのだけど、キタキツネのように目を細めないと読む事ができない。
だから僕が声を出して看護婦さんの携帯に届いたメールを読む。
 
「お母さん、マユミは今お昼休みだよ。ちょっと風邪気味でノドが痛いです。
もうメールの使い方わかった? わからないとこがあったらメールしてね……って書いてます」
 
他人の携帯に届いたメールを声に出して読むなんて、得体の知れない罪悪感がつきまとうのだが、
看護婦さんは嬉しそうに僕が読むメールにウンウンと頷いている。
それにしても「わからないとこがあったらメールしてね」とメールに書く娘さんもどうかと思う。
 
NTTのハローページに「電話が故障したら113番」と書いてあるけど
そもそも電話が故障したら113番になんてかけられないし
メールの使い方がわからなかったらメールなんて送れない。
 
「ありがとう、それじゃ返事書いといてね」
 
この際、仕事中という問題は度外視するとして、メールの返信を、しかも顔さえ見たこともない看護婦さんの娘に、母親の気持ちになってメールをするなんて。
 
「あ、看護婦さん、今度の夜勤いつですか?」
「えっと、明後日よ」
「わかりました」
 
僕は片手に看護婦さんの携帯を持って、仕事中にも関わらず休憩室へ行く。
そして小さな溜息をついて無駄な決心を固め、メールの返信ボタンを押す。
 
「マユミ、お母さんですよ。メールありがとう。少しずつメールの使い方も慣れてきました。
風邪は大丈夫? 最近冷えるからあまり無理をしないようにね。風邪の予防は薬よりもうがいが一番です。
お母さんは明後日が夜勤です。鹿児島も夜はすごく冷え込むからお母さんも風邪ひかないように気を付けます」
 
……。複雑な気持ちで送信ボタンを押す。
この世には、実に様々な方法で、人を助ける方法があると思った。

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